研究課題/領域番号 |
18K07890
|
研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
奥村 彰久 愛知医科大学, 医学部, 教授 (60303624)
|
研究分担者 |
増田 章男 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (10343203)
倉橋 宏和 愛知医科大学, 医学部, 講師 (30621817)
早川 昌弘 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院教授 (40343206)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | MYRF / 異常言動 / 可逆性脳梁病変 |
研究実績の概要 |
急性脳炎・脳症の遺伝学的背景の解明のため、遺伝学的解析を施行した。可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症(MERS)を反復する家族例2家系を発見し、全エクソーム解析によって、MYRF遺伝子に2家系に共通するミスセンス変異を同定した。この知見に基づいて、他のMERSの症例に対し、全エクソーム解析を行った。今年度は、反復性および家族性のMERS症例を対象に、MYRFで制御される可能性のある約700の遺伝子についてのバリアントに注目し、神経疾患をもたない対照群と比較した。その結果、バリアントをもつ遺伝子の数には差を認めなかったが、MERS症例と対照群では、バリアントを認める遺伝子が異なっていた。MERS症例では、GFOD1・HEMK1・CDIP1・PCSK6・LGMN・SLC5A11の変異が、対照群に比べて多い傾向であったが、これらの遺伝子バリアントとMERS発症との関連については現時点では明確な結論には達していない。さらに、男性のみにMERSが発症した家系例について、遺伝学的解析を行った。今年度はMERSに類似した可逆性脳梁膨大部病変を認めることが知られているX連鎖性Charcot-Marie-Tooth病の原因遺伝子であるCx32に注目し、解析を施行した。しかし、Cx32の変異は認めなかった。これらの結果から、MERSの発症については現在報告されているものよりも多様な遺伝学的要因が関与していると考えられた。MERSでは高サイトカイン血症との関連が指摘されており、免疫調節に関与する遺伝子との関係を解析する必要があると思われた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度中に、遺伝学的解析を概ね終了することができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、MYRF遺伝子の変異による機能の変化を様々な方法で研究する予定である。温度などの環境やサイトカインなどの液性因子によるMYRF蛋白の機能への影響を、試験管内や動物モデルの作成によって検討する準備を開始している。また、MERSや発熱に伴う異常言動の孤発例に対し全エクソーム解析を行い、MYRF以外の遺伝子の関与を検討中である。これらの研究成果は、発熱に伴う異常言動やMERSの原因を明らかにし、その病態や治療法の解明に有用である可能性がある。また、薬物と発熱に伴う異常言動との関係が明らかになり、その使用の適否を科学的な根拠によって示すことが可能になることが期待される。
|
次年度使用額が生じた理由 |
遺伝学的解析のための費用が予想よりも少額で収まったことと、細胞機能の解析の準備のスケジュールが2020年度にずれ込んだため。
|