研究課題
急性脳炎・脳症の遺伝学的背景の解明のため、遺伝学的解析を施行した。現在までに可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症(MERS)を反復する家族例2家系を発見し、全エクソーム解析によって、MYRF遺伝子に2家系に共通するミスセンス変異を同定した。この知見に基づいて、他のMERSの症例に対し、全エクソーム解析を行った。2023年に反復する白質脳症を認めた症例で新たにMYRF遺伝子変異を同定した。また、以前からMERSを反復していたMYRF変異を持つ症例が新型コロナウイルス感染症に伴ってMERSを再発したことが判明し、その病原性が確認された。現在までに、反復性および家族性のMERS症例を対象に、MYRFで制御される可能性のある約700の遺伝子についてのバリアントに注目し、神経疾患をもたない対照群と比較した。その結果、バリアントをもつ遺伝子の数には差を認めなかったが、MERS症例と対照群では、バリアントを認める遺伝子が異なっていた。MERS症例では、GFOD1・HEMK1・CDIP1・PCSK6・LGMN・SLC5A11の変異が、対照群に比べて多い傾向であったが、これらの遺伝子バリアントとMERS発症との関連については現時点では明確な結論には達していない。さらに、男性のみにMERSが発症した家系例について、遺伝学的解析を行った。可逆性脳梁膨大部病変を認めることが知られているX連鎖性Charcot-Marie-Tooth病の原因遺伝子であるCx32に注目し解析を施行したが、Cx32の変異は認めなかった。これらの結果ら、MERSの発症については現在報告されているものよりも多様な遺伝学的要因が関与していると考えられた。MYRF遺伝子変異を認め症例の血液からiPS細胞を樹立し、オリゴデンドロサイトに分化させて病態を解析する研究に着手した。患者由来のオリゴデンドロサイトの樹立し将来の研究の発展に応用する予定である。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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