研究課題/領域番号 |
18K07891
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
安達 直樹 関西学院大学, 理工学部, 助教 (00450601)
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研究分担者 |
鈴木 辰吾 香川大学, 医学部, 講師 (50451430)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 神経幹細胞 / ストレス / グルココルチコイド |
研究実績の概要 |
本課題は、平成30年度~平成31年度(令和元年度)の2年間で「グルココルチコイドによる神経幹細胞分化制御の分子メカニズムの解明」を計画している。 平成30年度は、以前に予備的実験によって得られていた、グルココルチコイドがSTATシグナルを活性化する一方で、mTORシグナルを減弱させることによって、神経幹細胞の分化の方向を制御する現象の再現性を確認した。 さらに、グルココルチコイドレセプター(GR)やSTATシグナルの阻害剤、mTORシグナルの活性化剤を用いることによって、これらの受容体やシグナルを介したグルココルチコイドによる神経幹細胞分化制御メカニズムの一端を明らかにすることができた。 さらに、これら運命決定過程に関わるその他の因子の候補を同定するため、グルココルチコイドによる神経幹細胞内のmRNA発現変動を次世代シークエンスによって解析を行うための、サンプル調製法などの準備を行った。 これらの結果は、胎生期から乳幼児期の発生・発達過程における血中グルココルチコイド濃度の上昇が、子どもの脳の発達に影響を及ぼす可能性を示唆しており、周産期・乳幼児期のストレスが、成長後の認知機能低下や精神疾患発症の引き金となりうるという仮説を支持する重要なエビデンスを示している。また、分子基盤の一端が明らかになったことによって、周産期・乳幼児期のストレスによる、脳の発達への影響を予防するためのターゲットを示している点でも意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30-31年度(令和元年度)の2年間での計画「グルココルチコイドによる神経幹細胞分化制御の分子メカニズムの解明」のうち、グルココルチコイドがGRやSTAT/mTORシグナルを介して分化制御を行うことを、ラット終脳由来の神経幹細胞の初代培養において明らかにすることができた。 さらに現在、グルココルチコイドがどのようにして、STAT/mTORシグナルの活性化を調整するのかについて、いくつかの候補因子をターゲットとして研究を行っており、その因子も31年度(令和元年度)中に同定できるというところまで進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度(令和元年度)は、これまでに見いだした「グルココルチコイドによる神経幹細胞分化制御の分子メカニズム」をより詳細に明らかにしていく。グルココルチコイド/グルココルチコイドレセプター(GR)とSTAT/mTORシグナルをつなぐ因子として、2つの栄養因子にターゲットを絞り込んで解析を行う。この栄養因子がグルココルチコイドによる神経幹細胞分化制御に関与していることが明らかとなれば、平成30-31年度(令和元年度)の研究計画の目的をある程度達成できることになる。さらに、これら運命決定過程に関わるその他のシグナル分子や転写因子の候補を探索するため、グルココルチコイドによる神経幹細胞内のmRNA発現変動を次世代シークエンスによって解析を行う。 また、平成32-33年度(令和2-3年度)に計画している「in vivoにおけるグルココルチコイドによる神経幹細胞運命決定の検証」のための、子宮内エレクトロポレーション法の習熟と、in vivoゲノム編集のためのDNAコンストラクトの構築と検証を平行して行い、研究後半の実験計画がスムーズに遂行できるよう準備をする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成32-33年度(令和2-3年度)に計画している「in vivoにおけるグルココルチコイドによる神経幹細胞運命決定の検証」のために必要な器具の購入やDNAコンストラクト作製等を、平成30年度から準備する予定で申請をしたが、所属大学の移動があり、平成31年度(令和元年度)に行うこととしたため、次年度使用額が生じた。
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