研究課題
GDF15は、TGFベータ遺伝子ファミリーに属する生体内活性物質であり、ミトコンドリアエネルギー代謝の異常を反映して細胞から放出される。しかしながら、その生物学的意義はいまだ不明である。我々は、GDF15がミトコンドリア病の診断に世界で最も有用なバイオマーカーである事を発見、特許申請し、体外診断薬の開発を行っている(JIMD投稿中)。ミトコンドリア機能不全が一次的に観察されるミトコンドリア病では、GDF15の値は病気の重症度に相関し、かつ薬効評価にも有用である事を報告した(Mitochondrion. 2019;48:11-5.)。有機酸血症のシックデイにおいても、蓄積した有機酸によるミトコンドリア機能の二次的異常が起こり、治療による基礎疾患の病勢改善によりGDF15も正常化する事を報告した(J Pediatr Endocrinol Metab. 2019;32(10):1181-5.)。幼少小児において頻発する原因不明の中小動脈血管炎を来す川崎病においても、急性期にはGDF15は異常高値を示し、病勢がおさまると、正常化する現象も報告した(J Cardiol. 2020;75(6):697-701.)。また、糖尿病患者での危急病態である糖尿病性ケトアシドーシスの急性期では、GDF15の異常高値がみられ、その値は治療が奏功して症状が改善する事で正常化する事が判明した。インフルエンザ脳症の急性期には異常高値を示し、回復するとわずか数日で正常化する事も見出した。以上の様に、GDF15は一次的、二次的な原因を問わず、ヒトにおけるミトコンドリア機能不全を鋭敏に示すサロゲートマーカーとなる可能性を見出した。今後は、この点に絞り更なる研究を進める予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
GDF15のミトコンドリア病診断としてのバイオマーカーの適応症を取得する目的で、Latex試薬を開発し、臨床性能試験を実施した。その結果、開発中の試薬のミトコンドリア病診断薬としての臨床性能は、感度95%、特異度91%であり、臨床使用に充分足りうる成果を示していた。ミトコンドリア病の診断に世界で最も有用なバイオマーカーであり日本での診断薬としての適応申請を行う予定である(JIMD投稿中)。また、種々のミトコンドリア病でもその診断バイオマーカーとして有用である事を報告した(Neurol Clin Neurosci. 2019;7:344-6、J Neurol Sci. 2019;405:116429. )。GDF15が臨床研究でも薬効評価としてのバイオマーカーで有効である事を報告し(Mitochondrion. 2019;48:11-5.)、ピルビン酸ナトリウムの治験でも報告している(Neurology投稿中)。幼少小児において頻発する原因不明の中小動脈血管炎を来す川崎病においても、急性期にはGDF15は異常高値を示し、病勢がおさまると、正常化する現象も報告した(J Cardiol. 2020;75(6):697-701.)。有機酸血症のシックデイにおいても、蓄積した有機酸によるミトコンドリア機能の二次的異常が起こり、治療による基礎疾患の病勢改善によりGDF15も正常化する事を報告した(J Pediatr Endocrinol Metab. 2019;32(10):1181-5.)。
GDF15は一次的、二次的な原因を問わず、ヒトにおけるミトコンドリア機能不全を鋭敏に示すサロゲートマーカーとなる可能性を見出した。今後は、この点に絞り更なる研究を進める予定である。
2019年度も物品の購入はそれほど増えなかったが、2020年度は国際学会での発表も控えており、未使用金額についても使用可能だと考える。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
J Cardiol.
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Mitochondrion
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doi: 10.1016/j.jns.2019.116429
J Pediatr Endocrinol Metab
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