研究実績の概要 |
単一遺伝子性糖尿病のうち、若年発症優性遺伝性糖尿病(MODY)が疑われる患者のうち、既知の高頻度MODY遺伝子(HNF1A, HNF4A, HNF1B, GCK)に変異を認めない症例におけるミトコンドリア遺伝子異常の役割を検討する課題である。2019年度は引き続き対象検体の収集を行いインフォームドコンセントを得たうえで、434例の家系発端者を収集し、このうちからミトコンドリア遺伝子解析の対象を同定するための既知MODY遺伝子の解析を行った。結果として、うち163例に既知遺伝子変異を同定したため対象検体は271例となった。この過程で上記の高頻度MODY遺伝子以外に従来新生児糖尿病の原因遺伝子とされてきたABCC8,KCNJ11変異をもつものが4%程度含まれることが明らかになった。うち一部は新生児低血糖症をきたす変異とされており、従来の知見と異なる結果であった(2019 IDF学術集会で発表、論文作成中)。また、ミトコンドリア遺伝子を3つの断片に分けてその全長をPCR増幅し、次世代シーケンスで解析する系を確立した。昨年度までの課題であった一部でシーケンス深度が低下する問題は回避できたため、上記検体を一部で解析を行った。コントロールとして既知MODY遺伝子に変異をもつ症例を用いた。シーケンス深度500以上1%以上のヘテロプラスミーを検出することとした。対象、コントロール各12例の検討では、双方に共通に見られるヘテロプラスミーのほか、対象にのみ見られるヘテロプラスミーを検出した。それぞれ一塩基置換でミトコンドリアゲノムの広範囲に2-16%のヘテロプラスミーとして検出した。若年発症2型糖尿病の発症にミトコンドリア遺伝子異常が関与する可能性を示唆するものと考えられた。最終年度は今まで収集された検体を用いて多数検体の解析を行うとともに同定された変異の機能を解析する。
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