研究課題/領域番号 |
18K07896
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
野津 司 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (30312367)
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研究分担者 |
奥村 利勝 旭川医科大学, 医学部, 教授 (60281903)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 過敏性腸症候群 / 内臓知覚過敏 / 消化管バリア / CRF / サイトカイン / TLR4 / メタボリックシンドローム |
研究実績の概要 |
IBSの動物モデルである,LPSあるいは反復water avoidance stress (WAS)によって誘導される内臓知覚過敏と大腸透過性の亢進は,非選択的corticotropin-releasing factor (CRF)受容体拮抗薬,IL-1受容体拮抗薬,toll-like receptor 4(TLR4)拮抗薬で阻止された.またこれらの変化は,選択的CRF2受容体拮抗薬では阻止されなかったので,CRF1依存性の反応であるが,選択的CRF2刺激薬により抑制されたので,CRF2シグナルはCRF1シグナルを抑制する機能を持つことが明らかとなり,我々が2014年に発表した(Endocrinology 2014; 155: 4655),末梢CRFシグナルのバランス理論が成立することが明らかとなった.またCRFを末梢投与するとこれらIBSモデルと同様の消化管変化を惹起し,これらの変化もIL-1,TLR4シグナルを介する反応であり,末梢CRFシグナルのバランス理論が成立することを示した.上記の結果はストレスによってCRFシグナルが活性化されると,TLR4-サイトカイン系を刺激することにより消化管に微少な炎症が生じ,その結果として内臓の機能変化が生じ,IBSを発症する可能性を示唆している.一方慢性微小炎症,LPS,サイトカインの増加,消化管バリアー機能障害という今回のIBSモデルで認められた変化は,メタボリックシンドロームでも認められるため,両者には共通の病態が存在すると考えられた.そこでメタボリックシンドローム治療薬が,IBSモデルで認められる消化管変化を改善しないかを明らかにすることにした.その結果糖尿病治療薬であるmetformin, pioglitazoneが期待通りの作用を発揮することを確認し,これらがIBSの治療薬となり得ることを発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記の研究実績により計画以上に進展していると判断する.また成果を3編の論文として既にpublishしている.
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今後の研究の推進方策 |
今後はメタボリックシンドロームの他の治療薬を,このモデルでその効果を確認し,さらなるIBSの新規治療薬候補の探求を行っていきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定通り仕事は進んでいるが,当初予定した学会発表を中止し,論文作成に専念したことや,計上した試薬の使用が計画より少ない量ですんだこと,また論文添削費は,自分の英文作成スキル向上に伴い必要なかったこと,さらに休日に実験を自分で行う等で,研究補助者への謝金が発生しなかったことによる.本年度の実験中に,当初期待されていなかった新しい結果が得られたので,本来の計画に加えて,こちらの研究も合わせて遂行することにより,助成金を有効に使用する予定である.
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