研究実績の概要 |
最終年度はアンギオテンシンIItype2受容体拮抗薬のEMA401が,ラットのIBSモデル[corticotropin-releasing factor (CRF),lipopolysaccharide (LPS),反復水回避ストレス]で,内臓知覚過敏と腸管透過性亢進を阻止することを明らかにした.すでにアンギオテンシンIItype1受容体拮抗薬(ARB)のロサルタンと同様の効果を発揮することを報告しているので,これらの結果から,IBSではアンギオテンシンIIシグナルの活性化が,病態に深く関わっていることを世界ではじめて明らかにすることができた.さらにsodium-glucose cotransporter (SGLT)阻害薬のphlorizinもIBSモデルのこれらの消化管変化を阻止することを報告した.上記を含め,期間中の研究により,IBSモデルの内臓知覚過敏,腸管透過性の亢進は,CRF,Toll-like receptor 4, 炎症性サイトカインシグナルが関わっており,これらをブロックすることによりメタボリックシンドロームに使用される薬剤が,IBSの腸管変化を改善させることを示すことができた.さらにこれらの結果は,メタボリックシンドロームとIBSが共通の病態を持つ可能性を示唆しており,この仮説について,レビュー論文を発表し採択され,世界に広く今回の研究成果を公表することができた.加えてメタボリックシンドロームの病態に関与する分子であるapelinが,IBSモデルと同様の腸管機能変化を惹起することを突き止め,これらの変化は,apelin, CRF, TLR4が相互に活性化することでサイトカインシグナルを誘導して起きることを報告した.またapelinの拮抗薬は,IBSモデルの腸管機能変化を阻止することが出来たので,apelinシグナルの抑制が,新しいIBSの治療optionの一つとなり得ることを提案できた.
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