当研究ではこれまで、腸管神経が過多であるNcxKOマウスを用い、腸管における防御機構と腸内細菌叢において腸管神経が重要な役割を持つことを証明してきた。NcxKOマウスにおける腸管では、上皮バリア機構の異常と腸内細菌叢異常があるにもかかわらず、腸炎などの異常は起きていないことから、他の防御機構が働いているのではないかと考えられた。これまで、NcxKOマウスの小腸粘膜固有層では、野生型と比較して好酸球の増加がみられた。また、NcxKO腸管では、IL5の発現上昇を認めた。一方で、好酸球の誘導に関与するケモカイン・サイトカインについての発現増加は認めなかった。 IL5が好酸球の誘導に関わるか調べるために、ゲノム編集法を用いて、IL5KO/NcxKOダブルKOマウスを作製した。腸管粘膜固有層におけるFACS解析により、成熟好酸球(CCR3+CD11b-)が、ダブルKOマウスにおいて、NcxKOマウスと比較し減少していた(IL5KO/NcxKO:2.1% vs NcxKO:24.5%)。その結果、好酸球の総数(CCR3+)が減少した。以上の結果から、小腸におけるIL5の高い発現は、好酸球の成熟に関与することが示唆された。一方で、NcxKOマウス小腸において、CD4細胞またはILC2細胞が好酸球の増加に関与するデータは得られなかった。そこで、腸管神経が好酸球の増加に関与するかについて調べたところ、免疫染色法において、IL5と神経の共局在を認めた。現在、ゲノム編集法を用いて、神経特異的にIL5を欠損するnestincre/IL5FL/NcxKOマウスを作製し、それらの相互作用について解析を進めている。
|