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2020 年度 実施状況報告書

潰瘍性大腸炎における移植便中細菌の定着に関わる免疫機構の研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K07905
研究機関金沢大学

研究代表者

北村 和哉  金沢大学, 附属病院, 助教 (00579633)

研究分担者 飯田 宗穂  金沢大学, 附属病院, 助教 (40705604)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード潰瘍性大腸炎 / 腸内細菌 / 便微生物移植 / 粘膜付着菌
研究実績の概要

10名の炎症性腸疾患患者(潰瘍性大腸炎7名、クローン病3名)に対し、健常者ドナーより便微生物移植を行い、治療前後の便および大腸粘膜検体を採取した。便微生物移植を施行した潰瘍性大腸炎患者では、3例で著効、1例で有効、3例で無効であった。患者およびドナーの便、ならびに大腸粘膜よりDNAを抽出し、whole genome shotgunシーケンシング用のライブラリを作成した。ライブラリのサイズを確認後に、イルミナMIseqを用いてシーケンシングを行った。得られたリードからヒトゲノム配列、PCR複製の除去を行い、QIIMEを用いて細菌組成解析、UniFrac法による距離計量・多様性解析などのデータ解析を行った。便微生物移植で著効を認めた患者では、便中の細菌組成が大きく変化し、ドナーの組成に近づいたが、無効例では変化が乏しかった。つまりドナー便細菌が生着することが便微生物移植の成否に非常に重要なことが示された。有効例と無効例の臨床背景を確認すると、無効例でステロイドが併用されていた。ステロイドがドナー便細菌の生着を阻害する理由として、IL-17AやIL-22などのサイトカイン発現、IgAやIgGなどの免疫グロブリン発現、ディフェンシン, Reg IIIアルファやガンマなどの抗微生物ペプチド発現、MUC2やMUC5ACなど粘液形質の変化や、粘液の分泌量の変化などが考えられたため、これらの発現と腸内細菌組成の比較を行ったところ、ステロイド内服下でMUC2発現が有意に低下していた。現在、マウスモデルを用いて、ステロイドと移植微生物生着の関係を検証中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

便微生物移植のレシピエントである、瘍性大腸炎7名、クローン病3名、およびドナーの健常者6名の便および大腸粘膜より、細菌16S rRNAを抽出し、cDNAライブラリを作成し、シーケンシングを行った。得られたリードからヒトゲノム配列、PCR複製の除去を行い、QIIMETMを用いて解析を行った。また、レシピエント大腸組織よりRNAを抽出、cDNAを作成し、real-time PCRで各種分子の発現を解析中である。また、マウスにステロイドならびに細菌叢を投与し、ヒト便微生物移植のモデルを作成し、現在解析中である。新型コロナウイルス感染対策のため、実験室等の使用制限期間があり、進捗は当初予定よりもやや遅れている。

今後の研究の推進方策

便微生物移植の有効性を向上させるためにはドナー便中微生物のレシピエントへの生着が重要であるが、今回得られた結果より、その機序の一つとして、レシピエント大腸組織に発現し、ステロイドによって発現変化を起こす分子の関与が示唆された。さらに症例数を増やして検体収集を図るとともに、便の細菌組成の解析、大腸組織の宿主と微生物の相互作用に関与する分子の発現解析などを行って、便微生物移植における移植細菌の腸管粘膜への定着機構を明らかにする。また、便微生物移植の有効例と無効例の腸管微生物叢を比較し、潰瘍性大腸炎の寛解および増悪に関与する細菌を同定することで、より効果的な便微生物移植を行
える細菌カクテルの開発を目指す。

次年度使用額が生じた理由

H30、R1、R2年度に得られた結果をもとに、R3年度に移植便中微生物の生着機序に関与する分子の解析のために次年度の使用が必要と考えられる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 潰瘍性大腸炎の治療標的としてのMayo Endoscopic Subscore 1の検討2020

    • 著者名/発表者名
      北村和哉、林智之、岡藤啓史、飯田宗穂、鷹取元、水腰英四郎、金子周一
    • 学会等名
      日本消化器免疫学会

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公開日: 2021-12-27  

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