研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)におけるライソゾーム酸性リパーゼ(LAL)活性と病態進行への関与についてC型慢性肝炎と比較検討した. 対象は画像および組織学的に診断されたNAFLD患者42例とした.ウイルス排除が得られたC型慢性肝炎患者26例も検討した.LAL活性はEDTA添加血液を濾紙にスポットし酵素学的に測定した.LAL活性平均値をcut-off値として2群に分け臨床背景を比較検討し,肝細胞癌発症例の特徴を解析した. LAL活性(pmol/spot/h)の平均値は208.4 ± 68.2で,LAL低値群(n=22),LAL高値群(n=20)のLAL活性はそれぞれ151.8±35.2,259.8±48.4であった.年齢,男女比,BMI,糖尿病および脂質異常症罹患率に両群間で有意な差を認めなかった.アルブミン,白血球数,血小板数はLAL低値群で有意に低値であった(P=0.033,0.0001,0.0002).PT-INR,総ビリルビンはLAL低値群で有意に高値であった(P=0.005, 0.002).LAL低値群では肝硬変,肝細胞癌の合併が有意に高率であった(P=0.018,P=0.07).肝細胞癌の合併は6例認め,全例LAL低値群で,男女比は1:5,背景肝は5例が肝硬変で,糖尿病は5例で合併していた.AFP値は5.7±2.9 ng/ml,PIVKAII値は64.5±74.9 mAU/mlであった.MRI所見では3cm以上の腫瘍径例でも腫瘍の脂肪化を認めた.また,ウイルス排除後C型慢性肝炎の26例中画像上脂肪肝を認める例は6例で,LAL活性(pmol/spot/h)は132.9 ± 40.4と脂肪肝のない例の178.8 ± 71.1に比べ低値であった. NAFLDにおいてLAL活性の低下は肝硬変および肝細胞癌への進行に関与する可能性が示唆された.
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