潰瘍性大腸炎とクローン病に代表される炎症性腸疾患は、慢性炎症を伴う再燃と寛解を繰り返す難治性疾患である。クローン病は、効率のいいエネルギー源である脂質を摂取することで、腸炎が悪化することが知られているおり、脂質制限が指導されている。しかし、なぜ脂質摂取がクローン病の腸炎を悪化させるのか、その機序は不明である。近年、脂質負荷とオートファジーを介した活性酸素や小胞体ストレスの誘導が組織の慢性炎症に寄与していることが、非アルコール性脂肪肝炎などで報告されている。また、クローン病の病態においても、オートファジーの関与や小胞体ストレスとの関連が以前より知られている。本研究では、脂質負荷による腸炎悪化について、腸管粘膜のオートファジー機能に着目し、オートファジーを介した腸管の炎症制御機構の解明と、オートファジーを治療標的とした新たな治療法の開発、クローン病患者への新たな食事指導の提案を目的としている。
基礎実験(1) 培養細胞を用いて脂質負荷によるオートファジー遺伝子の機能解析。腸管上皮細胞株にsiRNAを用いてオートファジー遺伝子Atg5をノックダウンし、脂質負荷による小胞体ストレスおよび活性酸素の増減を検討してる。 培養細胞としてはヒト大腸上皮細胞株を用いて行っている。Atg5siRNAのtitierを含めて検討を進めている。 基礎実験(2) 脂質負荷によって腸管上皮にオートファジーの動態をin vivoで検討する。腸炎モデルマウスに対して脂質負荷を行い、オートファジーの誘導の有無を検討している。
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