研究課題
本研究は、脂肪性肝疾患の治療戦略となる病態の中で肝線維化に標的を当てて解析することを目的としている。申請者はB細胞活性化因子(BAFF)がインスリン抵抗性を誘導するアディポカインであることを見出し、脂肪性肝疾患の肝脂肪化と肝発癌に関与することを明らかにしてきた。今回の研究では、BAFFの脂肪性肝疾患の肝線維化への役割について、ノックアウトマウスを用いた動物モデルや細胞を用いて明らかにする。現在までの研究結果から、脂肪性肝疾患に対するBAFFの肝線維化への関与については、1.BAFFの肝星細胞への直接作用、2.肝脂肪化、肝細胞障害による細胞死、細胞ストレスから生じる星細胞活性化促進因子の産生、3.免疫担当細胞による産生されるサイトカイン、活性酸素などの影響、等の機序が想定される。本年度は1.肝星細胞の単離を行い、BAFF受容体の発現を行った。現在のところ星細胞でのBAFF受容体発現はみられないため、星細胞への直接の関与は考えにくい可能性がある。2.脂肪酸を負荷してマウス初代培養肝細胞の脂肪化誘導モデルを作成した。3.肝線維化モデルとして、四塩化炭素投与マウス、高脂肪食コリン欠乏メチオニン減量飼料投与マウスを作成した。これらのマウスモデルにおける肝線維化定量や機序の解析を行っているところであり、基礎データを集積している。また、現在はBAFFノックアウトマウス、BAFF受容体ノックアウトマウスを用いて上記モデルを作成中である。
2: おおむね順調に進展している
本年度行う予定であった基礎データの解析は比較的順調に経過している。来年度以降に行う予定のノックアウトマウスについても実験に供する状況が整えられた。
C57BL/6マウス、BAFF-KOマウス、BAFF-R-KOマウスを用いて肝線維化モデルおよびNASHモデルを用いて、肝組織像を解析するとともに、各群の肝臓を用いて星細胞活性化、細胞ストレス、細胞死について検討する。また、各群の肝内浸潤細胞をFACSで解析するとともにマクロファージにも着目して検討を行っていきたい。また、最終的には臨床検体を用いた検討も予定しており、脂肪性肝疾患の診断や治療への臨床応用に展開する上での基盤となる研究成果を得られるように努力していきたい。
遺伝子解析の一部が来年度に持ち越しになったために、次年度使用額が生じることとなった。次年度に行う遺伝子解析に充てる予定としている。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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