研究実績の概要 |
ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は様々な癌で高発現し,癌治療耐性に関与しており,HDAC class IIaが肝癌細胞で過剰発現していることが報告されている.本研究では肝細胞癌に対してHDAC class IIa阻害薬をレンバチニブと併用することで,相乗的な抗腫瘍効果を誘導することを見出した.レンバチニブはFibroblast growth factor receptor 4 (FGFR4)を阻害することで,オートクリンループによるシグナルを抑制し,抗腫瘍効果を発揮すると考えられている.一方,HDAC class IIa阻害薬がオートクリーンループに与える影響は不明である。HDAC class IIa阻害薬がFGFR4の発現に与える影響を検討し,レンバチニブ およびHDAC class IIa阻害薬併用療法の治療効果予測因子となり得るか評価した.ヒト由来肝癌細胞株を用いて,各細胞株ごとにHDAC class IIa阻害薬単独群,レンバチニブ単独群,両薬剤併用群に振り分けアポトーシスを評価し,各細胞株毎にFGFR4の発現およびHDAC class IIa阻害薬による発現変化を評価したところ, HuH-7とJHH-7においては両薬剤併用群で有意にアポトーシスを導いたが,JHH-6では単剤・併用群ともにアポトーシスを誘導しなかった.各細胞株でのFGFR4発現はHuH-7およびJHH-7で高かったが,JHH-6では発現を認めなかった.さらにHDAC class IIa阻害薬により,FGFR4の発現がJHH-7およびHuH-7において低下した.上記の成績から両薬剤併用でのアポトーシスの誘導はFGFR4の発現に依存していると考えられた.さらにFGFR4の発現低下がオートクリンループを阻害することで,相乗的にアポトーシスが誘導されると考えられた.
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