研究実績の概要 |
本研究ではこれらの新たな技術背景を基に、除菌後胃がん患者の胃内細菌叢のメタゲノム解析、ならびに、メタボローム解析を用いて、ヒトー細菌間相互作用に 深く関与する胃内細菌の遺伝子と遺伝子産物、代謝物と代謝経路を明らかにし、これらの分子や代謝経路、並びに、これらを有する細菌種をターゲットとした除 菌後胃癌の診断バイオマーカーの開発を目指している。胃内視鏡検査において除菌後患者および除菌後胃癌患者を選定し17例(除菌後胃癌8例、除菌後非癌9例)において、内視鏡下の粘膜ブラシ検体サンプリングを行った。回収した粘膜ブラシ検体から次世代シークエンサーを用いて16S rRNAメタゲノム解析を行い、大量の配列を解析、取得した。その結果 得られた塩基配列について、相同性検索および系統分類解析を実施した。胃内粘膜関連胃内細菌叢の分析において、主にプロテオバクテリア、バクテロイデス、 ファーミキューティス、フソバクテリア門で構成されており、α多様性(Chao - 1、観察種およびシャノン指数)は、除菌後患者および除菌後胃癌患者の 間に有意差はなかった。 門レベルでは、Haemophilus, Capnocytophaga, Oxalobacteraceae門の平均存在量は、除菌後非癌患者よりも除菌後胃癌患者で有意に減少した(P = 0.0343, P = 0.0036, P = 0.0064)。これらの細菌叢の減少が除菌後胃発癌に関わっている可能性があり、メタボローム解析を追加する予定である。
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