好酸球性食道炎は慢性アレルギー疾患であり、指定難病の一つである。欧米に比べて本邦では稀とされてきたが、最近報告数が増加してきている。EoEの一部にプロトンポンプ阻害薬が有効な症例があり、PPI反応性好酸球浸潤(PPI-REE)と提唱されている。EoEはTh2サイトカインによる好酸球浸潤を伴う炎症と粘膜下層の線維化が本態である。一方、PPIが有効な機序として、酸逆流による食道上皮バリア機構の破綻に基づく抗原の易侵入性を防止する機序とPPI自体の抗炎症作用が想定されているが、詳細な機序は不明である。本研究は胃酸が自然型アレルギー誘導を介して食道局所の慢性好酸球性炎症を修飾するという仮説を基にマウスモデルならびに臨床検体を用いて研究を行った。臨床的検討:当科で集積したEoE症例を対象として検討を行った。EoE症例は①PPI-REE群、②PPI投与では改善せず、ステロイド嚥下療法により自他覚症状が改善したEoE群、③P難治性EoE群、④食道のみならず胃・十二指腸・大腸にも病変を伴った群、⑤無症状EoE群に分けた。検討項目として、1)臨床的背景の比較:臨床背景(年齢、性別、身長・体重、罹患年数、アレルギー歴、同胞数、末梢血好酸球数、IgEレベル、内視鏡所見、食道内好酸球数など)を比較し、臨床的特徴についてはそれぞれの群でほぼ同様な臨床的特徴がみられた。2)PPI投与による組織学的評価を行うための至適な生検プロトコールが十分確立されていないことから、5個以上の生検を行ったしょうれいに関して解析を行った。結果、下部食道と中部食道から2個づつ4個の生検が必須であることが判明した。3)生検材料を用いた免疫組織化学染色を行った。免疫染色でもリンパ球、好中球、好酸球の染色を行い、IgG4の同定も行った。4)基礎的研究:マウスEoEモデルを確立することが困難であった。
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