研究実績の概要 |
膵癌は間質が豊富な腫瘍であり、がん遺伝子パネル検査をはじめとするがんゲノム解析検査においては、検体中の腫瘍細胞含有率が低いことが問題と考えられている。本申請研究は、ヒト膵癌組織より樹立した初代オルガノイド培養系を用いて、膵癌ゲノム医療における遺伝子解析のためのDNA検体を得ることを目的とした。膵癌の早期発見は未だ困難であり、多くの膵癌症例は初診時より切除不能と診断され、超音波内視鏡下組織採取法(EUS-TA)により組織診断が行われる。そのため、手術検体に比べて得られるDNA量が少ないEUS-TA検体を用いた遺伝子パネル検査ならびに全エキソーム解析検査が可能であるかは極めて重要な課題となる。 本検討では、EUS-TAにより得られた検体を用いてエキソーム解析を行うことに成功し、少量のEUS-FNA検体から全エキソーム解析が可能なDNA検体を得ることが可能であることが示唆された。 エキソーム解析および遺伝子パネル検査によって変異が認められた遺伝子は、TP53, SMAD4, KRAS, CDKN2Aのほかに、ARID1A, ARID2, BRCA2, などであった。膵癌においては、KRAS遺伝子が高頻度で強いドライバー遺伝子となっており、現在行われている遺伝子パネル検査により治療標的となる遺伝子変異が見つかる確率は低い。 今後、EUS-TAによる組織採取の効率を高め、全エキソーム解析あるいは全ゲノム解析に使用可能な良質なDNA検体を採取する方法を確立する必要がある。
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