研究課題/領域番号 |
18K07923
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
仁科 惣治 川崎医科大学, 医学部, 講師 (70550961)
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研究分担者 |
原 裕一 川崎医科大学, 医学部, 講師 (60550952)
日野 啓輔 川崎医科大学, 医学部, 教授 (80228741)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | がん / 解糖系 / 2-Deoxy-D-Glucose(2DG) / 2DG-PLGA-NP / 抗腫瘍免疫 |
研究実績の概要 |
がん特異的解糖系阻害剤である2DG-PLGA-NPによる抗腫瘍効果において、新規腫瘍免疫活性化機序を見出した。 具体的には、2DGによるがん細胞の解糖系阻害は、①肝癌細胞での乳酸産生低下に伴うIFNγ/JAK-STATシグナル経路亢進、あるいは ②肝癌細胞でのAMPK活性亢進を介したヒストンメチル化酵素enhancer of zeste homolog 2(EZH2)のリン酸化によるHistone H3 lysine 27トリメチル化抑制(H3K27me3)によるケモカインCXCL9,10,11産生を亢進させることを明らかにした。 また、リアルタイム細胞動態解析装置を用いた検討により、肝癌細胞とCD8+T細胞共培養下において2DG-PLGA-NPは、肝癌細胞での乳酸産生低下もしくはT細胞への相対的な糖取り込み亢進によりCD8+T細胞走化性を亢進させた。 一方で、免疫応答性肝発癌マウス(STAMマウス)において、2DG-PLGA-NPは抗PD-1抗体による抗腫瘍効果を増強させた。 その一方で、抗PD-1抗体抵抗性がん細胞(B16F10)移植したシンジェニックマウス(C57BL/6)に対する2DG-PLGA-NPの抗腫瘍効果も明らかにした。 さらに、抗PD-1抗体単独群と比べて抗PD-1抗体+2DG-PLGA-NP併用群の腫瘍組織においては、CD3陽性T細胞浸潤能が亢進しており、腫瘍免疫活性化機序関与が示唆された。同マウスに対して2DG-PLGA-NPに抗CXCR3中和抗体を併用したところ、2DG-PLGA-NPによる抗腫瘍効果が部分的ながらキャンセルされた。すなわち、抗PD-1抗体抵抗性モデルに対しても、CXCL9,10,11-CXCR3相互作用を介したT細胞性腫瘍免疫の関与が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載したように、2DG-PLGA-NPの新たな腫瘍免疫活性化機構を見出したのみならず、免疫チックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)との併用による抗腫瘍効果を相乗的に増加し、抗PD-1抗体耐性がん細胞移植マウスに対しても抗腫瘍効果を発揮した。以上より、前年度の進捗状況としては計画通り概ね順調に行われたと考える。 以上の研究成果に対して、これまでの2DG-PLGA-NPの新規腫瘍免疫活性化機構に関する検討結果をbrush upしていくこととした。また、免疫応答性肝発癌マウスモデルの腫瘍組織に対するメタボロミクス解析を用いて、2DG-PLGA-NPを用いたがん組織での糖代謝リプログラミングが、がん微小環境における他の細胞内代謝プロファイルにどのような影響を及ぼすのかを統括的に解析するために、研究計画の追加を行った。
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今後の研究の推進方策 |
概ね順調であった前年度までの研究成果に対して、これまでの2DG-PLGA-NPの新規腫瘍免疫活性化機構に関する検討結果をbrush upしていくこととした。 また、免疫応答性肝発癌マウスモデルの腫瘍組織に対するメタボロミクス解析を用いて、2DG-PLGA-NPを用いたがん組織での糖代謝リプログラミングが、がん微小環境における他の細胞内代謝プロファイルにどのような影響を及ぼすのかを統括的に解析するために、研究計画の追加を行った。 以上の検討結果を踏まえて論文成果としてまとめる方針とした。
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