研究課題/領域番号 |
18K07923
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
仁科 惣治 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (70550961)
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研究分担者 |
原 裕一 川崎医科大学, 医学部, 講師 (60550952)
日野 啓輔 川崎医科大学, 医学部, 教授 (80228741)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / 解糖系阻害剤 / ナノ粒子 / 腫瘍免疫 |
研究実績の概要 |
肝発癌マウス(STAMマウス)に対して2DG-PLGA-NP投与群およびPLGA-NP投与(2DG非含有;control)群の2群に分けて、肝腫瘍組織に対してメタボロミクスによる網羅的解析を行った。 2DG-PLGA-NP投与群ではPLGA-NP投与(control)群と比べ、肝腫瘍組織における乳酸(L-Lactate)の産生量が減少していた。 一部の癌細胞ではde novo脂肪酸合成の促進を示すことも報告されているが、2DG-PLGA-NP投与群ではPLGA-NP投与(control)群と比べ、大部分の脂肪酸代謝産物の含有量が低下していた。がん細胞においては、解糖系の代用となるATP産生経路として、TCAサイクルを介して細胞質に輸送されたクエン酸がアセチルCoAに代謝される。細胞質に存在するアセチルCoAはマロニルCoAに変換され、脂肪酸合成経路へと進む(Hom Res 2007;68:72-82)。一方で、AMPKがリン酸化(Ser79,212)されると、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)のリン酸化を介してアセチルCoAからマロニルCoAへの代謝が抑制され、脂肪酸合成を阻害する(Nat Med 2013:19;1649-1654)。2DG-PLGA-NP投与群ではPLGA-NP投与群と比べ、AMPKリン酸化およびACCリン酸化が亢進されることを見出した。したがって、2DG-PLGA-NPを投与された肝癌組織では、AMPKリン酸化亢進→ACCリン酸化亢進を介して脂肪酸合成能が低下している可能性が考えられた。また、2DG-PLGA-NP投与群ではPLGA-NP投与群と比べ、ATP産生量も低下していた。 以上より、2DG-PLGA-NP投与による解糖系阻害によりATP産性能が低下していたが、脂肪酸代謝による代償的なATP産生機構も破綻させている可能性が考えられた。
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