本研究では、CTOSパネルを用いた感受性試験の結果、BMP阻害剤が新規治療薬候補となりうることを見出した。多数の大腸がんCTOSラインを用いたBMP阻害剤感受性試験により、感受性症例の詳細な分布が明らかとなった。BMP阻害剤への感受性は、明らかな感受性例/耐性例の2群に分類されるのではなく、そのIC50はむしろ正規分布に近い分布を示した。シグナル経路の評価の結果、BMP阻害剤により増殖が抑制される機序・されない機序については、単一の因子により規定されるのではなく、複数の機序が存在することが明らかとなった。例えば、BMP阻害剤に対し比較的効果が弱い群では、BMPR/SMAD経路の恒常的な不活性状態や、BMPリガンドのautocrineの欠損など、多様な機序がその原因となっていた。またBMP阻害剤感受性例の多くでは、BMP阻害によるMEK/ERK経路の抑制がみられた。MEK/ERK経路の阻害には、活性型EGFRタンパクの減少が相関しており、BMP阻害により直接的あるいは間接的に活性型EGFRを制御する機序の存在が示唆された。BMP阻害剤と併用効果のある薬剤としては、cetuximabよりもMEK阻害剤において、より強い効果が認められた。In vitroのBMP阻害の効果と、マウス移植腫瘍を用いたin vivoでのBMP阻害剤/MEK阻害剤の併用効果には相関する傾向が認められた。In vitroでのCTOSを用いた感受性アッセイは、機能的バイオマーカーとして有用な可能性が示唆された。さらに、併用効果をもたらす分子機序およびバイオマーカー開発に向け、取得したデータの解析を継続する。
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