研究課題/領域番号 |
18K07927
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
藤谷 幹浩 旭川医科大学, 医学部, 教授 (80322915)
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研究分担者 |
上野 伸展 旭川医科大学, 医学部, 特任講師 (30436000)
小西 弘晃 旭川医科大学, 医学部, 特任助教 (30777181)
盛一 健太郎 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (70455715)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / フェリクローム / Heptelidic acid / ポリリン酸 / 大腸腫瘍 / 炎症性腸疾患 |
研究実績の概要 |
①プロバイオティクス由来活性分子の同定、各菌由来分子に特異的な作用機序の解明 2018年度に麹菌の培養上清から強い抗腫瘍活性を持つ分画を得た。2019年度は、質量分析器を用いてこの分画を詳細に解析し、菌由来抗腫瘍分子heptelidic acidの同定に成功した。heptelidic acidはp38MAPKの活性化を介して膵癌細胞株に対し高い抗腫瘍作用を示した。また。マウス腸管内に本分子を投与した際、腸管外にも抗腫瘍作用を発揮することが明らかになった。 ②疾患モデルによるプロバイオティクス由来分子および化学修飾分子の治療効果解析 約20症例のヒト大腸腫瘍からオルガノイドを樹立し、菌由来抗腫瘍分子の効果や作用機序を解析した結果、乳酸菌由来フェリクロームは約90%以上の大腸腺腫および大腸癌に抗腫瘍作用を発揮した。さらに、crysper cas9法による遺伝子編集にて網羅的に各分子の欠損細胞株を作製しフェリクロームの標的分子を探索した結果、4つの結合パートナーが同定された。一方、乳酸菌由来の腸管バリア機能増強分子である長鎖ポリリン酸の修飾体を作製した結果、腸管保護作用および分子安定性が10倍以上向上した。また、炎症状態においたヒト単離マクロファージおよび薬剤誘発マウス腸炎モデルに対して抗炎症作用を発揮した。
以上から、菌由来抗腫瘍分子(フェリクローム、heptelidic acid)および腸管バリア増強分子(長鎖ポリリン酸および修飾体)は、プロバイオティクスの効果を仲介する分子であることが証明され、これらの分子を用いた新薬開発の基盤的成果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①プロバイオティクス由来活性分子の同定、各菌由来分子に特異的な作用機序の解明 麹菌の培養上清から強い抗腫瘍活性を持つ菌由来分子heptelidic acidの同定に成功し、その作用機序を明らかにした。さらに、マウス腸管内に本分子を投与した際、腸管外にも抗腫瘍作用を発揮することも明らかにし、腸内細菌が腸管外疾患である膵癌に対して抗腫瘍作用を発揮するメカニズムい一端を明らかにすることができた。 ②疾患モデルによるプロバイオティクス由来分子および化学修飾分子の治療効果解析 大腸腫瘍の疾患モデルとしてヒト由来大腸腺腫および癌のオルガノイドを構築し、乳酸菌由来フェリクロームの抗腫瘍効果を証明した。乳酸菌由来の腸管バリア増強分子である長鎖ポリリン酸の修飾体を作製した結果、バリア増強作用は10倍以上増加した。さらに、薬剤誘発マウス腸炎モデルにてその効果を証明した。 これらの成果は英文論文にて公表(Cancer Cell Int, 2021、他)、もしくは投稿中(Scientific Reports, under review)であり、本研究おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
投稿中の論文が早期に公開されるよう査読コメントに対応していく。また、非公開データについては、今後、論文化していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究成果の一部について、2020年度に論文を投稿し、現在査読を受けている。そのため、論文掲載料として使用予定であった費用が次年度使用額として繰り越された。2021年度に論文掲載費用として使用する計画である。
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