研究課題
本年度は下記の前年度までの成果をまとめ、追加の検証実験を行い論文化した(Konishi H and Fujiya M. Sci Rep 11(1):11070, 2021、その他)。①プロバイオティクス由来活性分子の同定、各菌由来分子に特異的な作用機序の解明麹菌の培養上清から強い抗腫瘍活性を持つ分画を得た。質量分析器を用いてこの分画を詳細に解析し、菌由来抗腫瘍分子heptelidic acidの同定に成功した。heptelidic acidはp38MAPKの活性化を介して膵癌細胞株に対し高い抗腫瘍作用を示した。また。マウス腸管内に本分子を投与した際、腸管外にも抗腫瘍作用を発揮することが明らかになった。②疾患モデルによるプロバイオティクス由来分子および化学修飾分子の治療効果解析約20症例のヒト大腸腫瘍からオルガノイドを樹立し、菌由来抗腫瘍分子の効果や作用機序を解析した結果、乳酸菌由来フェリクロームは約90%以上の大腸腺腫および大腸癌に抗腫瘍作用を発揮した。さらに、crysper cas9法による遺伝子編集にて網羅的に各分子の欠損細胞株を作製しフェリクロームの標的分子を探索した結果、4つの結合パートナーが同定された。一方、乳酸菌由来の腸管バリア機能増強分子である長鎖ポリリン酸の修飾体を作製した結果、腸管保護作用および分子安定性が10倍以上向上した。また、炎症状態においたヒト単離マクロファージおよび薬剤誘発マウス腸炎モデルに対して抗炎症作用を発揮した。以上から、菌由来抗腫瘍分子(フェリクローム、heptelidic acid)および腸管バリア増強分子(長鎖ポリリン酸および修飾体)は、プロバイオティクスの効果を仲介する分子であることが証明され、これらの分子を用いた新薬開発の基盤的成果が得られた。
すべて 2021 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Sci Rep
巻: 11 ページ: 11070
10.1038/s41598-021-90707-4.