研究課題/領域番号 |
18K07930
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
岡田 浩介 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (80757526)
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研究分担者 |
石毛 和紀 筑波大学, 医学医療系, 講師 (20597918)
蕨 栄治 筑波大学, 医学医療系, 講師 (70396612)
正田 純一 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90241827)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | NASH / NASH肝癌 / p62 / Nrf2 |
研究実績の概要 |
NASH肝発癌におけるNrf2およびp62の役割を明らかにすることを目的として,本年度は以下の研究を実施した. ① 組織細胞特異的p62およびNrf2遺伝子レスキューマウスの作製:p62およびNrf2遺伝子のイントロンに、LoxP配列で挟まれた転写終結シグナルおよびpolyA付加シグナル配列を挿入したノックインマウス(p62 KI/KI, Nrf2KI/KI)を作製し,このマウスとの交配により,Nrf2KI/KI/p62-/-マウスとp62KI/KI/Nrf2-/-マウスを得た.このマウスは,全身でp62およびNrf2遺伝子が二重欠損しており,NASHを発症する.次に,全身でのp62とNrf2遺伝子二重欠損下において,組織特異的にp62とNrf2の発現をレスキューするために,Vill-Cre(腸管上皮),Albumin-Cre(肝細胞),Adipoq-Cre(脂肪細胞),Lyz2-Cre(Kupffer細胞)マウスとの交配を開始した.Albumin-Creマウス,Adipoq-Creマウスについては,Jackson labolatoryから輸入・購入した.現在掛け合わせおよび繁殖を行っている.マウスの数が揃った段階で肝発癌促進モデルとして高脂肪食投与を開始し,表現型の比較を行う予定である. ② p62およびNrf2の肝細胞およびマクロファージにおける肝発癌シグナルへの関与(細胞研究):肝細胞(Hepa1-6)およびマクロファージ細胞(RAW264.7)のp62およびNrf2をCRISPR/Cas9 systemを用いてノックアウトし,p62およびNrf2を欠失したHepa1-6細胞とRAW264.7細胞を得ることに成功した.今後p62とNrf2のノックアウトによる肝発癌シグナルの変化を,immunoblotで解析する計画である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当研究で使用する組織細胞特異的p62およびNrf2遺伝子レスキューマウスは,三重の遺伝子改変を行う必要があり(p62, Nrf2-KOとp62, Nrf2-KIならびにcreマウスの掛け合わせが必要.最終的な遺伝子型は,Nrf2KI/KI/p62-/-マウスもしくはp62KI/KI/Nrf2-/-かつ,cre/+となる.),このマウスの作製に最も時間を要すると予測される.現段階では,Nrf2KI/KI/p62-/-マウスとp62KI/KI/Nrf2-/-マウスを得ることに成功しており,今後creマウスとの交配を進めていく.また,レスキューマウス作製のための,Vill-Cre(腸管上皮),Albumin-Cre(肝細胞),Adipoq-Cre(脂肪細胞),Lyz2-Cre(Kupffer細胞)マウスについても,譲渡もしくは購入により入手済みで,筑波大学生命科学動物資源センターで管理を行っている.2019年度中に目的の組織細胞特異的p62およびNrf2遺伝子レスキューマウスを得られる予定である.ただし,遺伝子改変を行ったマウスは著しく繁殖力が落ちるため,繁殖に予測以上の時間を要する可能性はある. また,p62およびNrf2の肝細胞およびマクロファージにおける肝発癌シグナルへの関与を細胞レベルで探索するために使用する細胞についても,肝細胞(Hepa1-6)およびマクロファージ細胞(RAW264.7)のp62およびNrf2をCRISPR/Cas9 systemを用いてノックアウトし,p62およびNrf2を欠失したHepa1-6細胞とRAW264.7細胞を得ることに成功した.今後p62とNrf2のノックアウトによる肝発癌シグナルの変化を,immunoblotで解析する計画である.
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今後の研究の推進方策 |
組織細胞特異的(腸管上皮,肝細胞,脂肪細胞,Kupffer細胞)レスキューマウスを得られた段階で,経時的な体重測定を行い,表現型を観察する.32週齢で解剖し,全身p62およびNrf2遺伝子二重欠損マウスと,特にNASH病態の表現型を比較解析する.次の段階として,60%高脂肪食(オリエンタル酵母)を6週齢から26週間にわたり自由摂餌させて解剖し,NASHに加え肝癌についての表現型(個数,病理学的悪性度など)を比較し,どの組織(臓器)のp62もしくはNrf2が肝癌の発生に重要であるか,あるいはどのように肝癌発生を防御しているかを明らかにする. 同時に,p62およびNrf2CRISPR/Cas9 systemを用いてノックアウトした肝細胞(Hepa1-6)およびマクロファージ細胞(RAW264.7)を用いて,今後p62とNrf2のノックアウトによる肝発癌シグナルの変化を,immunoblotで解析する計画である. 動物モデルでの解析は,ヒトのNASH肝癌との相同性・類似性が問題になる可能性がある.このため,東京女子医科大学消化器外科において,外科手術で収集されたヒトNASH肝癌臨床検体を用いてKeap1-Nrf2 pathwayおよびp62を中心とした免疫染色(p62, Nrf2, Keap1の他,p62が制御するautophagyの調節因子である,LC3A, LC3B, multiubiquitinを想定)を行い,NASH肝発癌と肝癌進行におけるNrf2およびp62の役割を,動物モデルとヒト臨床検体の両面から明らかにすることを計画している.ヒト臨床検体を用いるため,東京女子医科大学および筑波大学附属病院の倫理委員会の承認を既に得ている.
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