研究課題
NASHと肝癌の病態を臓器連関の視点から比較解析し,NASH肝発癌と肝癌進行におけるNrf2およびp62の役割を明らかにすることを目的として,本年度は以下の研究を実施した.全身でp62およびNrf2遺伝子が二重欠損するp62KI/KIかつNrf2-/-(DKO)マウスと組織特異的にCreリコンビナーゼを発現するマウス(Albumin-Cre,Adipoq-Cre,Lyz2-Cre)を交配することにより,Nrf2遺伝子は全身で欠失しながら,それぞれ肝細胞,脂肪細胞,マクロファージ/肝Kupfferにのみ特異的にp62を発現するレスキューマウスを作製した.これらのマウスに60%高脂肪食を26週間摂餌させ,NASH病態および肝癌発生について比較検討した.肝細胞,脂肪細胞各々の特異的p62レスキューは,マウスの体重変化に影響を与えず,いずれもDKOマウスと同様に高度の肥満と肝腫大を呈した.脂肪細胞のp62レスキューは,肝病理のsteatosis activity fibrosis(SAF)scoreによるNASH病態評価において,DKOマウスと同程度の重症NASHを発症し,肝癌を発症した.しかし,肝細胞のp62レスキュー(Hep-res)は,NASHの肝脂肪化(DKO 2.4 ± 0.1 vs Hep-res 1.7 ± 0.1),炎症(DKO 2.0 ± 0.0 vs Hep-res 1.4 ± 0.2),線維化(DKO 4.0 ± 0.1 vs Hep-res 2.8 ± 0.2)とNASH進展を軽減し,肝癌の発生率を30%から14%に低下させた.この結果から,特に肝細胞のp62発現がNASHに対して防御的に機能し,肝硬変への進行を抑制することにより肝癌発生を低減させていると推測された.p62の賦活化は,NASH防御の新規標的として有望であると考えられた.
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件)
Experimental Animals
巻: 69 ページ: 395-406
10.1538/expanim.20-0028