硬化性胆管炎モデルであるKRT19陽性細胞誘導性CDH1ノックアウトマウスにネオマイシンとメトロニダゾールを投与し、通常飲水群に比べ胆管周囲にリンパ球を主体とする炎症細胞浸潤の減弱がみられた。また膠原繊維、線維芽細胞ともに抗生剤投与で減弱した。一方高脂肪食の投与では6wで15%の体重は増加、肝細胞の脂肪化がみられたが胆管炎については有意な増悪を認めなかった。 2019年度は硬化性胆管炎の合併症である潰瘍性大腸炎のモデルで、腸内細菌叢の異常も指摘されているIL10ノックアウトマウスを用いた。肝内、そして胆管周囲に炎症細胞浸潤を伴う胆管炎がみられたが、前年度の硬化性胆管炎モデルに比して膠原繊維の沈着、αSMA陽性細胞浸潤は目立たなかった。一方免疫染色ではリンパ球に加え、CD11c陽性樹状細胞、F480陽性マクロファージ、MPO陽性好中球など骨髄球系の細胞が増加していることが分かった。肝組織のmRNA発現では野生型マウスに比してTNFa、IL-1b、CXCL1などのサイトカイン、ケモカインの発現増加がみられた。 2020年度はIL10ノックアウトマウスの胆管炎に対する抗生剤の影響を検討した。メトロニダゾール+ネオマイシンの投与によって、IL10ノックアウトマウスの腸炎、胆管炎ともに著明に減弱した。肝組織のフローサイトメトリーで、IL10ノックアウトマウスの肝内にはCD3陽性リンパ球、CD11b陽性Gr1陽性好中球が著明に増加していたが、抗生剤投与によってほぼ野生型マウスレベルまで減少した。一方KRT19陽性細胞誘導性CDH1ノックアウトマウスモデルのフローサイトメトリーではとくにCD3陽性リンパ球の変化、mRNAの検討ではIL-17の変化が有意であった。これらの結果から胆管炎の制御には抗生剤による腸内細菌叢の変化が有用である可能性が示唆された。
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