研究課題/領域番号 |
18K07932
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
泉谷 昌志 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (90532739)
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研究分担者 |
筆宝 義隆 千葉県がんセンター(研究所), 発がん制御研究部, 部長 (30359632)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膵がん / 早期診断マーカー / オルガノイドモデル / PanIN / IPMN |
研究実績の概要 |
本研究は、代表的な難治性固形がんである膵がんの早期発見およびそれによる予後改善を実現するために、膵がん前がん病変(PanINやIPMN)に相当するマ ウスおよびヒトオルガノイドを用いた膵発がん過程再現モデルを構築・応用し、従来は困難の多かった膵がん前がん病変を解析対象とし、効率的に真に有用なヒ ト膵がんの早期診断マーカーを探索することを目的とする。 初年度は、本研究の基礎となる、マウス膵発がんモデルの検証を行った。マウス膵臓より樹立した正常膵オルガノイ ドに変異Krasやp53 KOなどの変異を導入し、ヌードマウス皮下に移植し腫瘍形成能及び腫瘍を病理学的に評価した。Kras変異単独ではPanINに相当する腫瘍の形成が、Kras変異に加えてp53等の変異を導入した場合により異型度の高い腫瘍の形成が確認された。 昨年度は、このモデルを用いて、腫瘍オルガノイドの増殖抑制効果を有する薬剤のスクリーニングを行うことで、モデルの有用性について検討を行った。マルチウェルプレート上にてKrasG12D;Trp53-/-の膵臓オルガノイドから形成された皮下腫瘍由来の膵臓腫瘍オルガノイドを3次元培養し、これ に約400種類の薬剤ライブラリーの化合物を1uMの濃度で加えて48時間継続し ATP cell viability assayにて評価した。陽性コントロールとしてヒト膵腫瘍でも 臨床的に用いられている gemcitabine を用いたが、sigmoid curve状の用量反応曲線を呈し、安定した増殖抑制効果を示した。 今年度は、ライブラリースクリーニングの結果、増殖抑制を呈する化合物が複数同定された。これらについて、さらに個別に複数の濃度で再現性・有効性の確認の評価ならびに、同じ遺伝子型の別の膵がんオルガノイドや正常の膵管上皮オルガノイドでの検証を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度においては、COVID-19流行に伴う研究活動の停止措置や制限等にともない、研究活動へのおおきな制約が存在した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以後については、マウスに加えてヒト検体での検討、ならびに当該モデルで形成された腫瘍の詳細な解析を実施することが考えられる。すなわち、 ・ヒト検体:ヒトIPMN患者膵液由来膵管上皮オルガノイドを用い、ウイルスベクターによる膵がん関連する遺伝子の導入ならびにヌードマウス皮下に移植し腫瘍 形成能を検証する。これにより 、IPMNおよびさらに一段階進展した腫瘍に相当するオルガノイドの解析が可能になる。 ・膵前がん病変の遺伝子発現解析・培養上清のプロテオミクス解析:当該モデルで得られたマウスおよびヒトの前がん病変やがん相当オルガノイドから核酸を抽 出し、網羅的遺伝子発現解析、次世代シークエンサーを用いたゲノム解析を検討する。さらに、上清中より回収した核酸・タンパクを用いて網羅的発現解析、プロテオミクス解析の実施可能性について検討する。これらの解析結果から早期診断マーカー候補を抽出し、ヒト検体での検討を経て診断マーカーとしての有用性 を検討する方向性が想定される。 また、薬剤ライブラリースクリーニングにより得られた、膵臓腫瘍オルガノイドの増殖抑制効果を有する化合物について、複数のオルガノイドを用いた確認をすすめ、またその作用機序等についての検証も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19流行に伴う研究計画の遅延にともない、遅延分の研究計画遂行のため次年度使用額が生じた。
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