研究課題/領域番号 |
18K07933
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中田 史子 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (70815448)
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研究分担者 |
早河 翼 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60777655)
山田 篤生 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80534932)
新倉 量太 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90625609)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 小腸粘膜障害 / Dysbiosis / 幹細胞 |
研究実績の概要 |
小腸潰瘍・小腸悪性リンパ腫・小腸癌・小腸ポリーポーシス患者20人の小腸粘膜を用いて、小腸細菌叢を16srRNAメタゲノム解析にて網羅的に解析した。さらにNSAIDsと酸分泌制酸剤と小腸細菌叢との関連を検討し、小腸細菌叢と薬剤の関連が示唆された。マウス小腸において幹細胞と前駆細胞の動態を把握するため、幹細胞を特異的に標識可能なLgr5-CreERTマウスと内分泌系前駆細胞を特異的に標識可能なMist1-CreERTマウスを用い、Rosaレポーターマウスと交配させることで系譜追跡実験を行った。定常状態においてはLgr5陽性幹細胞は長期間にわたり自己複製を行い継続して子孫細胞を供給し続けたのに対し、Mist1陽性前駆細胞は短期間しか生存せず、子孫細胞も杯細胞、腸内分泌細胞、Tuft細胞、Paneth細胞のみしか供給しなかった。ここにドキソルビシンによる粘膜障害を惹起させたところ、Lgr5陽性細胞のみならずMist1陽性前駆細胞も幹細胞化し、連続的に子孫細胞を供給して粘膜再生に貢献するようになった。遺伝子発現解析の結果、障害後の前駆細胞内ではNotch経路の活性化が認められた。Mist1陽性細胞にNotch1を強制発現させNotch経路を活性化させたところ、障害時と同様にMist1陽性前駆細胞の幹細胞化が認められた。一方で、幹細胞化したMist1陽性前駆細胞はApc遺伝子を欠損させると腫瘍を形成したことから、特定の環境下では癌起源細胞としての働きも持つと考えられた。以上の結果は国際誌Gastroenterologyに掲載された。一方Notchが活性化した状態では内分泌系細胞への分化は失われ、吸収系上皮細胞のみが供給されており、細菌層解析の結果、糞便中細菌層が変化していることがわかり、細菌層と幹細胞・前駆細胞の活性化状態との間に相関関係があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト小腸検体を用いた16srRNAメタゲノム解析は概ね完了しており、免疫組織化学に関する検討をすすめていく。マウスモデルを用いて幹細胞・前駆細胞の相互転換のメカニズムを明らかにし、国際誌に報告することができた。細菌層解析をすすめ、消化管粘膜の幹細胞・前駆細胞の活性化状態と細菌層変化との関連を検討中である。マウスにジクロフェナクを投与することで胃・小腸・大腸に多発潰瘍を惹起できることを予備的検討で確認したが、投与量過剰のせいか、マウスが数日で死に至ってしまい、幹細胞・前駆細胞の系譜解析や、細菌層との関連についての検討ができていない。今後条件検討を行い長期実験をすすめていく。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り、ジクロフェナク投与実験の条件検討を進め、長期間にわたる系譜解析・細菌層解析を進めていく。ヒト臨床検体を用いた細菌層解析データとの比較を行い、ヒトにおける小腸粘膜障害の病態理解をすすめていく。
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