研究実績の概要 |
本年度は、①今までMCP-1+sSiglec-9(2Pro)の効果を示してきたD-galactosamine(D-gal)誘発急性肝不全モデル以外での汎用性の検討、②D-gal誘発急性肝不全モデルにおいて未だ明らかではなかった肝再生促進の機序について検討を行った。 ①ConcanavalinA誘発マウス急性肝不全モデルにおいて15mg/kg静注後3時間の時点で2Pro群とPBS(コントロール)群に分けると有意に2Pro群における投与7日目までの生存率が高かった(P=0.0107)。ただし、ピークである投与24時間後ではALT値は両群間では大きな差は見られなかった。炎症の程度に差はないにも関わらず生存率に差が出るのがその後に引き続く肝再生の差なのかどうかのメカニズムについては現在検討中である。CCL4誘発急性肝不全マウスモデルにおいては、2ml/kgのCCL4投与後24時間にて2Pro、もしくはPBSを投与、比較検討を行うと、投与5日目までの生存率はやはり2Pro群で高い傾向にあり(P=0.0539)、ALT値は低い傾向にあった。現在こちらについてもメカニズムについて検討を行っている所である。 ②D-gal誘発ラット急性肝不全モデルにおいて肝再生マーカーであるFn14, TWEAK, HGF, β-cateninについて検討した。従来の1.2g/kg投与時ではFn14の発現は1日目に、TWEAK,HGF, β-cateninについては2日目にピークを迎えた。興味深いことに半量の0.6g/kg投与ではこれらのピークが1日目にずれることがわかり、壊死が小さい分より早く肝再生機序が発現するものと考えた。またD-gal投与後24時間で2Pro群とPBS群で比較検討すると、2Pro群においてHGF,β-catenin、EpCAMの発現が高いことが示された。
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