膵癌細胞株では一次線毛が観察されにくかったが、術前放射線化学療法 (NCRT) を施行した局所進行膵癌の細胞において、一旦消失した一次線毛がCRT後に再度認められる現象を確認した。一次線毛が形成されると細胞増殖抑制効果があると考えられ、膵癌細胞株に、USP8をノックダウンするためのsiRNAを添加し、一次線毛の形成と増殖停止の有無、Hhシグナル伝達経路への影響を評価した。Trichopleinを脱ユビキチン化する酵素のUsp8(ubiquitin-specific protease 8)を標的としたsiRNAのin vitro評価を行なった。この評価においては、一次線毛が再度認められることはなかった。今後は、三重大学でCRTを施行し、手術に至った患者の膵癌摘出標本を用いて、膵癌細胞における一次線毛の有無、Hhシグナル伝達分子であるSHH、GLI1、 CCND1の発現を免疫組織学的に検討する。一次線毛の有無については、抗ARL13Bモノクローナル (m) 抗体、抗ARL13Bポリクローナル (p) 抗体を用い、SHHシグナルの発現の有無については、抗GLI1抗体、抗SHH抗体、抗CCND1抗体の一次抗体と、Histofine MAX-POの二次抗体を用いる。抗ARL13Bm抗体、抗ARL13Bp抗体を用いて膵癌細胞における一次線毛の陽性率を評価し、SHH関連因子の発現との相関をみることで、一次線毛の保有状態がSHHシグナル伝達経路の活性化促進に関連するかどうかを評価する。
|