研究課題/領域番号 |
18K07939
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
石村 典久 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 講師 (40346383)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 好酸球性消化管疾患 / 好酸球性食道炎 / 性差 |
研究実績の概要 |
好酸球性消化管疾患の罹患範囲と病態形成に及ぼす因子に関して検討を行っており、今年度は以下の成果を得た。 ①ヒト食道生検材料を用いた検討:活動期の好酸球性食道炎患者(男性10例、女性8例)および好酸球性胃腸炎で食道病変を伴う症例(男性2例、女性4例)の食道生検組織を用いてCAPN14関連遺伝子の発現について定量PCRおよび免疫組織学的染色にて検討した。CAPN14関連遺伝子は男女間での発現に大きな差は見られなかったが、好酸球性胃腸炎症例でよりepidermal differentiation complex(EDC)蛋白の発現低下が顕著であった。 ②食道扁平上皮株を用いたオルガノイド培養系での検討:既報を元に食道扁平上皮株をcollagen-fibronectin coated Transwellを用いて培養しオルガノイド培養系を確立した。この系にdihydrotestosterone(DHT)およびestradiolを添加することでIL-13投与後のeotaxin-3の誘導に変化がみられるかについて定量PCRおよび培養上清中の蛋白濃度を評価したところ、DHT添加群においてeotaxin-3の発現の亢進が見られた。一方、estradiol添加群では発現亢進の程度が低いことが示された。 ③好酸球性消化管疾患の罹患部位と腸内細菌叢の関わりに関する検討:好酸球性食道炎患者6例、好酸球性胃腸炎患者3例の唾液および便のサンプルを回収しており、16S ribosomal RNA可変領域の塩基配列を次世代シークエンサーを用いて解析を開始している。好酸球性食道炎に対してプロトンポンプ阻害薬を長期投与している症例では健常人で得られた傾向と同様に腸内細菌叢の変化が見られた。また、好酸球性食道炎と好酸球性胃腸炎では、腸内細菌叢のパターンに相違が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
好酸球性食道炎は男女比が4:1で男性優位な疾患であるため、女性の好酸球性食道炎例が目標数まで達していない。また、好酸球性胃腸炎は稀な疾患であるため、好酸球性胃腸炎の食道病変を伴う症例についてもまだ症例数が不足している。 好酸球性食道炎モデルマウスの作成については、既報に従って卵白アルブミン(OVA)を腹腔内投与して感作を成立させた後、OVAを鼻腔内に滴下(3回/週、3週間)することで作成を行っており、作成後に食道に好酸球性炎症および線維化などの好酸球性食道炎の病態を形成しているかの確認を行っているが、安定したモデルの形成ができていない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
好酸球性消化管疾患は好酸球性食道炎と好酸球性胃腸炎に分けられるが、好酸球性胃腸炎で生じる食道病変におけるCAPN14関連因子の発現が好酸球性食道炎で認められる発現状況と異なる傾向があることを見出しており、この点についてさらに解析を進めていく。好酸球性食道炎モデルマウスに関しては、マウスの背側皮膚を剃毛し、OVAを経皮感作させた後にOVAを腹腔内に投与することで好酸球性炎症を食道内に発症させることを予備的実験にて確認しており、安定してモデルが形成できる方法を確立し、検討を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品やPCR用キット、抗体について、別の検討で用いているものが使用可能であり、予定よりも使用額が少なくなったことから次年度に繰り越すこととした。繰り越し分は、培養、動物実験、出張費などに充てる予定である。
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