研究課題
本研究では、切除不能進行胃癌におけるヒストン脱メチル化酵素JMJD2A の治療標的因子あるいは効果予測マーカーとしての有用性を立証すること、そして、JMJD2A によるエピジェネティック調節を介した薬剤感受性の制御のメカニズムを明らかにすることを目的とした。令和2年度の研究では、Gene expression array により抽出されたJMJD2A が制御する標的遺伝子であるTXLNBおよびSPATA21について以下の検討を行った。胃癌培養細胞株を用いて、JMJD2Aノックダウン条件下でTXLNBおよびSPATA21のmRNAおよび蛋白質の発現量が減少した。次に、各遺伝子のsiRNAによるノックダウンについて条件検討を行い、最適条件を抽出した。今後、得られたノックダウン条件において、薬剤耐性の変化を検討する予定である。研究期間全体を通じた研究では、標的遺伝子の1つであり、プロアポトーシス遺伝子であるCCDC8について以下の検討を行った。まず、胃癌培養細胞株を用いて、CCDC8ノックダウン細胞およびコントロール細胞に種々の濃度の5-FU,CDDP またはdocetaxelを加えて培養し、WST assay によりIC50 を算出し感受性の変化を検討した。CCDC8ノックダウンにより各薬剤に対する耐性が上昇した。次に、胃癌培養細胞株を用いて、JMJD2Aノックダウン細胞およびJMJD2A過剰発現細胞、コントロール細胞におけるヒストンH3のメチル化状態を調べた。ウエスタンブロッティング法により、トリメチル化あるいはジメチル化のヒストンH3K9の発現の増減を確認した。そして、免疫沈降法によりJMJD2AがCCDC8と複合体を形成することを明らかにした。以上の結果より、JMJD2Aはエピジェネティック制御によりCCDC8の発現調節を介して薬剤感受性に関与していることが示唆された。
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Gastric Cancer
巻: 3 ページ: 426-436
10.1007/s10120-019-01024-9