研究課題/領域番号 |
18K07946
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
兒玉 雅明 大分大学, 福祉健康科学部, 教授 (20332893)
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研究分担者 |
村上 和成 大分大学, 医学部, 教授 (00239485)
沖本 忠義 大分大学, 医学部, 講師 (90381037)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Helicobacter pylori / 除菌後胃癌 / 次世代シーケンサー |
研究実績の概要 |
解析対象の抽出 1988年から2017年までに胃粘膜解析を行った症例は8858例に上る。このうち1988から2012年に内視鏡検査施行、HP陽性にて除菌に成功し3年以上内視鏡的経過観察を受けた331例において前庭部および体部大弯の2点の組織を用いupdated Sydney systemに準拠し組織学的炎症、活動性、萎縮、腸上皮化生(IM)の推移を除菌前より経時的に評価した。検定としてstudent-t検定を用いた。除菌成功例331例(男性192例, 女性139例, 平均年齢57.3±11.4歳)において除菌後5年追跡71例, 15年追跡30例, 17年追跡し得た症例は16例であった。 除菌後17年間の長期観察にて炎症、萎縮は除菌1年後からの有意な改善を認めた。改善は除菌10年以降はほぼ一定となった。IMは改善傾向を認めたが、期間を通して有意な変化を認めなかった。男性は女性より前庭部萎縮、前庭部体部IMが高度で有り胃癌高リスクが示唆されたが、除菌10年後には性差は認めなかった。免疫組織化学では、除菌後胃癌の次世代シーケンサー解析にて多くの遺伝子変異を認めたTP53の産生蛋白発現が、陰性群よりも有意に強く見られ、除菌後には改善を示していた。これよりIMを有す症例、男性症例において除菌後胃癌リスクへの注意したフォローが必要と考慮された。 この除菌後胃粘膜萎縮改善を示した症例において、除菌前と除菌5年経過後に採取された凍結検体を用い、以前の研究で除菌後胃癌に認められた遺伝子変異との関連を見るために次世代シーケンサーを目的としてDNAの抽出を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、除菌成功5年以上経過観察をした症例のうち、トリゾール試薬にて組織検体を保存し得た症例を抽出した。このうち20例において、除菌前および除菌5年後の体部小弯粘膜からの検体よりQIAamp DNA FFPE Tissue Kit56404 (キアゲン)を用いDNAを抽出を行った。この中よりDNA収量の高い5例において、次世代シーケンサーによる遺伝子解析を行った。収量は1.0から10.7 マイクログラム、平均5.0マイクログラムであり、解析を行うには十分な収量を確保できている。今回、除菌後5年以上の長期経過観察を行い、5年間の比較が可能な非癌部位粘膜の凍結検体を採取し得た症例の解析を行っている。しかし、除菌前検体は少なくとも5年以上前の検体である。いずれも-80℃にて凍結保存しているが、実際DNA抽出した場合、DNAの断片化がやや進行しているものが見られ、収量にもややばらつきが認められた。次世代シーケンサーにおいて良好な結果を示すために、数多くの凍結検体におけるDNA抽出および品質の比較にH30年度は時間を要した。しかし、すでに次世代シーケンサー解析に良好な症例がそろい、H30年度末に解析を開始し、2019年4月の時点で当初の目標の次世代シーケンサー解析を終了している。
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今後の研究の推進方策 |
現在、除菌成功5年以上経過観察をした症例のうち、トリゾール試薬にて組織検体を保存し得た症例を抽出した。このうち20例において、除菌前および除菌5年後の体部小弯粘膜からの検体よりDNAの抽出を行っている。各DNAサンプルの次世代シーケンスはタカラバイオ株式会社、バイオメディカルセンターに委託、品質検定、ライブラリー作製、シーケンス解析、情報解析 変異塩基候補の検出を行った。シーケンスライブラリーを作製、パネルとしてIon AmpliSeq Cancer Panel を用い50種類の癌関連遺伝子のDNA変異解析をIon Protonシーケンサー (ライフテクノロジーズ社)による高速シーケンス解析にて実施しシーケンスデータを得、解析を行っていく。 今後は当初の計画通り、H. pylori未感染症例、除菌後長期経過例、除菌後胃癌の解析症例数を増やし、臨床的な背景因子比較、免疫組織化学を含む病理組織学的な比較検討を行い、更に次世代シーケンサーを用いた遺伝子解析により除菌後胃癌の特性、危険因子となる遺伝子変異の抽出を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、除菌成功5年以上経過観察をした症例のうち、トリゾール試薬にて組織検体を保存し得た症例を抽出し、除菌前および除菌5年後の体部小弯粘膜からの検体よりQIAamp DNA FFPE Tissue Kit56404 (キアゲン)を用いDNAの抽出を行った。年度内に対象サンプルを用いてパネルとしてIon AmpliSeq Cancer Panel を用いた癌関連遺伝子のDNA変異解析をIon Protonシーケンサーにて行う予定であった。しかし、除菌前の検体は少なくとも5年以上前の検体であり、10年前に採取されたものも含まれた。いずれも-80℃にて凍結保存しているが、実際DNA抽出した場合、DNAの断片化がやや進行しているものが見られ、収量にもややばらつきが認められた。次世代シーケンサーにおいて良好な結果を示すために、数多くの凍結検s体におけるDNA抽出および品質の比較にH30年度は時間を要した。当初、H30年度内に初回の次世代シーケンサー解析を行う予定であり、そのための予算を組んでいたが、H31年度に解析がずれ込んだために次年度使用が生じた。やや遅れたもののすでに良好な組織がそろい、次世代シーケンサー解析はH30年度内に開始、H31年度4月末には既に解析結果が出ており、今後解析を進める予定である。
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