研究実績の概要 |
腫瘍血管新生は、がんの増殖・浸潤・転移に関わる重要な機構であり、有望な治療標的である。大腸がん検体から腫瘍部分の血管内皮と対照正常部分の血管内皮を分離して、RNA-seq解析を行った。その結果、AEBP1 (Adipocyte enhancer-binding protein 1) が腫瘍血管内皮で発現上昇し、血管新生に関わっていることを見いだした。 AEBP1は腫瘍血管内皮細胞(Tumor endothelial cells, TEC)において高発現すること、そして血管内皮細胞の増殖・遊走・血管新生に重要な役割を担っていることを明らかとしている。さらに大腸がんxenograftモデルを用いた解析から、AEBP1の阻害による腫瘍形成や血管新生の抑制効果を明らかにした。AEBP1の下流標的遺伝子を探索するため、AEBP1ノックダウンおよび過剰発現が遺伝子発現に与える影響を、マイクロアレイにより網羅的に解析した結果、AQP1 (Aquaporin 1)、POSTN (Periostin)など既知の腫瘍血管関連遺伝子発現を制御し、大腸がんの腫瘍血管新生に関わっている可能性が示された。これらの結果からAEBP1が治療標的として有用であることが示唆された。
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