大腸癌は全世界的に増加傾向であり、早急な対策が求められている。便潜血による健診や、内視鏡検査によるポリープ切除は大腸癌の死亡率を下げることが報告されているが、大腸ポリープや癌を内視鏡治療した患者はその後も大腸ポリープや癌の再発/新規発生が多いことが知られており問題となっている。これらの対策はがん予防における二次予防(早期発見、早期治療)にあたり、これまで一定の成果を上げてはいるが、増加する大腸癌の罹患/死亡には対応しきれておらず、今後はより進んだ対策が求められている。そのため根本的な対策である一次予防(健康増進/疾病予防)が今後の大腸癌の罹患/死亡率の抑制や、高騰する医療費の抑制には、より重要となる。 そこで我々は、新規培養技術であるオルガノイドを用いて正常上皮、腺腫、Sessile serrated adenoma/polyp(SSA/P)、大腸癌のそれぞれの発癌段階をオルガノイドで再現し、化学予防候補薬の薬理/機序解明を網羅的に解析するシステムの開発を行うことを目的として研究を行った。 ヒト由来の大腸オルガノイド(正常上皮、大腸腺腫、SSA/P、大腸癌)の樹立に成功し、大腸癌の発癌過程のオルガノイドバンクの作成を行った。さらにオルガノイドをヌードマウスの皮下に移植しvivo解析も行う実験手技を確立した。 大腸腫瘍化学予防効果が報告されているアスピリンおよびメトホルミンを用いて抗腫瘍効果を検討する実験を行ったところ、両剤を併用することによりsynergy効果を発揮し、より強力な予防効果を示した。現在は、その機序について詳細な解析を行い、更にXenograft modelでvivoにおける抗腫瘍効果の発現について解析を行っている。
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