研究課題/領域番号 |
18K07954
|
研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
土屋 貴愛 東京医科大学, 医学部, 講師 (50449138)
|
研究分担者 |
柚木 俊二 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第二部バイオ応用技術グループ, 主任研究員 (20399398)
永川 栄泰 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第二部バイオ応用技術グループ, 副主任研究員 (30587415)
糸井 隆夫 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (60338796)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ハイドロゲルステント / biofilm付着 / プラスチックステント / 金属ステント / 胆泥 |
研究実績の概要 |
我々はこれまでの医工連携研究により、ポリビニルアルコール(PVA)ゲルの吸水膨潤性と機械的強度が両立可能であることを明らかにした.一昨年度は初期状態はプラスチックステントに類似し,吸水により金属ステントと同等に自己拡張する高強度なハイドロゲルステント(HGS)の創製が可能であったため,昨年度はその成果をさらに発展させ,開発したHGSを豚の胆汁中に漬け込み,拡張率,膨張率をレントゲン透視下に確認した.さらには豚を用いて,実際に胆管内へこの試作HGSを留置し,内視鏡的留置術に耐えうるステントであるかの評価と,一ヶ月の留置期間を経て取り出し,自然脱落することなく留置が可能であったか,脱落しなかったHGSは開存していたか,biofilmの付着はどの程度あるのか,などの胆管内での長期の胆管開存性および易抜去性の非臨床による実証とその機序の解明を行った. ステントの拡張率,膨張率は生理食塩水内と胆汁中において差はなく,液体内に浸けてから1-2時間ほどで80%程に拡張し,6時間以内に90%程拡張することが判明した. 内視鏡留置時の初期の形態においては,胆管出口である乳頭から胆管へ挿入しやすくするためステントの先端をテーパリングする工夫が必要であることがわかった.初期状態から速やかに液体を吸着し柔らかくなってしまうと挿入できないため,PVAの配合比を工夫した. しかし,実際にはPVAの特性上液体内では表面がヌルヌルするため,豚に留置した際に自然脱落してしまうことが判明し,フラップをつけるなど,ステントの形状を工夫し長期間留置可能となった.一ヶ月後の開存も確認でき,胆泥やbiofilmの付着もほぼないことが判明した. 今後は,さらに内視鏡的に挿入性に優れた形態に改善し,現在市販されているプラスチックステントや金属ステントとのbiofilmの付着具合の比較検討を行い,実臨床に沿ったHGS開発を進める.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胆汁を吸着し自然拡張するハイドロゲルステント(HGS)は完成に近づいている.豚での実験でも内視鏡での留置は問題なく行える段階に来ている.自然脱落してしまうという予想しなかった事象も起こったが,形状の工夫を図り,長期留置が可能となった.内視鏡で抜去可能であることも大切な事項であるが,これも実際に抜去が行えている.実臨床で使用できるステントとするための形状の工夫と,更なる胆泥付着予防やbiofilm形成を抑えるPVA配合度合いを考えていく.
|
今後の研究の推進方策 |
HGSの創出は可能であった.実際に内視鏡で留置や抜去も可能となった.今後は実際に臨床で課題となっている胆管ステントの長期(可能であれば永久)開存を目指せるPVA配合度を工夫すること,市販されているプラスチックステントと金属ステントを長期留置した際には,胆泥の付着やbiofilmの付着は必発で起こるため,開発HGSが科学的に現在市販されているステントと比較し胆泥の付着やbiofilmの付着が少ないことを比較検討する.本年度は実用化にむけた,上記の取り組みを動物実験で繰り返し行っていく.
|
次年度使用額が生じた理由 |
豚コレラの問題で実験用の豚が搬入できなかった事,COVID-19の影響で国内外の学会発表と学会参加ができなかったことにより,2020年度にまわさせて頂きます.2020年度に引き続き,ハイドロゲルステント作成,豚でのステント留置実験,研究成果の学会発表等に使用させて頂きます.
|