研究課題/領域番号 |
18K07958
|
研究機関 | 株式会社関西メディカルネット(関西電力医学研究所) |
研究代表者 |
千葉 勉 株式会社関西メディカルネット(関西電力医学研究所), 関西電力医学研究所, 学術顧問 (30188487)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | IgG4関連疾患 / 自己免疫性膵炎 / IgG4硬化性胆管炎 / ラミニン511-E8抗体 |
研究実績の概要 |
1.AIP患者の抗ラミニン511抗体の病的意義の解析:抗ラミニン511抗体陽性患者のIgG1, IgG4, IgG1 + IgG4, IgA投与について、昨年度は短期の効果を観察したが、今回、少数例についてその中期の効果を検討した、その結果膵組織に、T,Bリンパ球さらに形質細胞の浸潤がみられ、慢性膵炎の像を呈していた。さらに本抗体陰性患者の免疫グロブリンの効果を抗α6β1インテグリン抗体の有無によって観察したが、本インテグリン抗体陽性の患者では、抗ラミニン511抗体投与時に比較して、その程度は低いもののほぼ同様の膵病変を誘発した。またその際のIgG1, IgG4の反応は、両抗体でほぼ同じであった。一方、抗α6β1インテグリン抗体陰性例では、ほとんど病変は観察されなかった。また抗ラミニン511抗体、抗α6β1インテグリン抗体陽性例では、胆管にも軽度の好中球、リンパ球浸潤を認め、各Ig分画の効果も膵病変と同じ傾向であった。 2.抗ラミニン511抗体の有無によるAIPの臨床的解析:II型AIP患者6例について、本抗体の有無を観察したところ、3例で陽性をしめした。したがってII型AIPと診断されている症例の中にはI型AIPがかなり含まれていることが判明した。この中に潰瘍性大腸炎症例が1連存在したが、本抗体陰性であった。一方、抗ラミニン511抗体陽性AIP患者31例について、CT, MRI, 超音波にて胆管病変の有無を検索したところ、約70%の例で、胆管病変が存在していた(IgG4関連胆管炎)。これに対して本抗体陰性21例では、胆管病変の陽性率は約20%と、明らかに低かった。これらIgG4関連胆管炎症例のがんの合併、アレルギーの合併は、AIP同様、抗ラミニン511抗体陰性例で多かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題である、1.AIP患者の抗ラミニン511自己抗体の病態的意義については、前年度に引き続き、マウスにIgG4, IgG1, IgG1 + IgG4, IgA投与を行い、短期に加えて、中期の結果を得た。さらに抗体陰性例についても、抗α6β1インテグリン抗体陽性例と陰性例をそれぞれ投与して、その結果を得た。2.AIP患者について、抗ラミニン511陽性例と陰性例の臨床像の比較についても、その実態を徐々に解析しつつある。加えて抗α6β1抗体陽性と陰性についても、その差異を明らかにしつつある。また、IgG4関連胆管炎についても、抗ラミニン511抗体の有無による臨床的差異を検討して、その結果I型自己免疫性膵炎とIgG4関連胆管炎の関係を明らかにしつつある。実際には、I型自己免疫性膵炎の大半に胆管病変が、また逆にIgG4硬化性胆管炎の大半に膵炎像が存在することも明らかとなった。このように1,2についてもほぼ順調に進んでいる。唯一、患者抗体の病態的意義について、種々の病態モデルマウスへの投与については、PD1欠損マウス、胸腺摘除マウスへの投与実験を開始したところであり、若干の遅れがみられるが、この点については2020年度に検討を加えたい。
|
今後の研究の推進方策 |
1.AIP患者血清のマウスへの投与実験については、今まで行ってきた、正常の新生児マウスへの投与に加えて、現在進行中のPD1欠損マウス、胸腺摘除マウス、さらにはPD1欠損+胸腺摘除マウス、さらにそのほかの免疫不全マウスへの投与実験を行う。さらに、今まで行ってきた、投与早期の解析に加えて、1か月後の中期の効果についても検討をおこなう。特に胸腺摘除マウスについては、生後3日目に胸腺摘除を行うため、抗体投与はさらにその後に行う必要があるため、患者血清が大量に必要となる。このため、症例数を増加させつつある。 2.抗ラミニン511抗体陽性、陰性例、さらに抗α6β1抗体陽性、陰性例の検討については、特にα6β1陽性例の数が少ないため、これも現在症例数を増加させつつある。今後とくにこれらの症例についての解析をすすめる。 3.自己免疫性膵炎、IgG4関連硬化性胆管炎については、それぞれ胆管病変、膵病変の検討には困難を伴うが、これらについては、CT,超音波、MRI検査を駆使することによって、非侵襲的な方法で解析をすすめる。特に胆管病変については、原発性硬化性胆管炎との鑑別について、自己抗体も含めて詳細に検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初、遺伝子改変による免疫異常マウスを用いて、患者IgGを投与する予定であったが、これらの遺伝子改変マウスへの投与について、中期の効果を見るために、血清量が大量必要となった。このために現在、患者数を増やして、血清量を増加させる努力を行っている。以上のため、現在、遺伝子改変マウスへの投与実験に遅れがしょうじている。来年度はこの遅れを取り戻すべく、遺伝子改変モデルマウスを用いた実験を遂行したい。あわせて、その結果の解析も同時に行う予定である。
|