研究課題
B型肝炎ウイルス(HBV)のXタンパク(HBx)はユビキチンリガーゼCUL4-DDB1と複合体を形成し、増殖に抑制的に働く宿主因子をユビキチン化・分解する可能性が示されており、新たな薬剤標的として注目されている。本研究では、HBV複製におけるユビキチン・プロテアソーム系の関与を包括的に理解することにより、新規抗ウイルス療法の開発を目標とする。本年度は、HBx (R96E)に特異的に結合する宿主因子の同定をタンデムアフィニティー法と質量分析を用いて試みた。2種類のアフィニティータグ (mycとflag) とTEVプロテアーゼによる切断部位を直列につないだ複合体型タグを組み込んだHBx野生型及びDDB1に結合しない変異体(R96E)の発現プラスミドを293T細胞に導入し、タグに対する抗体を用いてHBx複合体を2段階精製し、HBx結合蛋白をゲルから切り出し、質量分析計にてタンパクを同定した。DDB1はHBx(WT)には結合するものの、HBx(R96E)には結合しないことを確認した。さらにHBx(R96E)に特異的なバンドのうち一つからは、DDX1(ATP-dependent RNA helicase DDX1)というDEAD-box型RNAヘリカーゼの一つが同定された。本分子は、ATP加水分解のエネルギーを用いてヘリケースとして働き、RNAのスプライシング、核外輸送や安定化に関与している。他のウイルスであるヒト免疫不全ウイルスやJCウイルスの複製を正に制御していることが知られており、今後そのユビキチン化の標的としての可能性、また、本分子の機能解析を行う。さらに他に同定された分子についても同様の検討を行う。
2: おおむね順調に進展している
本年度は質量分析を用いてHBxに結合する宿主因子を複数個同定し、CUL4-DDB1の基質としての可能性も検討を開始している。計画は順調に進んでいると思われる。
来年度は引き続き質量分析を用いたHBx-CUL4-DDB1による特異的基質の同定と機能解析を継続し、さらにプロテインアレイを用いたHBxにより誘導されるユビキチン化基質の同定を開始する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
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