肥満および糖尿病を呈するdb/dbマウスにazoxymethane (AOM)を投与して発生する肝内胆管病変に対して、胆管癌の発癌剤として既報にあるthioacetamide(TAA)の併用が及ぼす影響について解析した。CK-19での免疫組織染色によって肝内の腫瘍性病変は胆管由来であることが確認された。AOM単独投与群に比べて、TAA併用群では病変数の増加がみられた。また、血清ALT値およびT-Bil値がTAA併用群で有意に高値であったほか、炎症性サイトカインであるTnfaおよびIl6のmRNA発現の解析から、肝における炎症の増悪が示唆された。これらの実験結果から、肝における慢性炎症が胆管の増殖性変化を促進し肝内胆管癌の発生に寄与する可能性が考えられた。また、腫瘍性病変がみられた肝におけるFgfr2遺伝子発現が高値であることが確認され、ヒト肝内胆管癌での報告からもモデルとして適性であることが示唆された。 さらに、野生型マウスの給餌誘発性肥満を背景とした脂肪肝において、同様に肝内胆管病変が発生するか検討するための動物実験、および糖尿病治療薬SGLT2阻害薬が胆管癌に及ぼす作用について、ヒト胆管癌細胞株を用いて実験を行った。高脂肪食給餌野生型マウスでは、通常食給餌群に比較して脂肪肝がみられたものの、肝内胆管病変の発生に関しては有意な差は認められなかった。ヒト胆管癌細胞株におけるSGLT2のタンパク質発現は数種類の細胞株で確認され、48時間の薬剤処理によって細胞増殖が抑制される傾向がみられた。胆管癌の増殖抑制に対して、SGLT2阻害薬が有用である可能性が示された。
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