研究課題
免疫治療の標的としてのマイクロRNAの重要性を示すため、癌間質に存在するマイクロRNAを同定することを目的とし、間質部の組織をlaser microdissection により分離、マイクロRNAを抽出し、正常部でのマイクロRNAと比較した網羅的解析を行った。以上から、がん間質において、免疫抑制を介して、癌進展に関わるマイクロRNAを同定することに成功した。これまでにin vitroの実験とThe Cancer Genome Atlas (TCGA)をはじめとするデータベースの解析から、間質においてがん免疫に関わるマイクロRNA、ならびに遺伝子候補群の同定に成功している。次にこれらの分子が、癌に発現することによって、腫瘍免疫にどのような影響を果たしているのかを調べたところ、これらの候補分子は免疫疲弊シグナルの増強や抗原提示の抑制、免疫細胞(細胞障害性T細胞や樹状細胞)では不活化や分化抑制、炎症性サイトカインの分泌抑制などに重要な役割を有することが分かってきた。腫瘍免疫が高度に活性化されているMSI陽性大腸癌に着目し、これらで発現が亢進する分子に着目し、これらが細胞の遊走能や薬剤耐性など癌細胞の悪性形質にどのように関わるかを明らかにした。また注目した分子に対して、大腸癌臨床サンプルを用いた免疫組織化学染色を行ったところ、これらの分子は、癌組織において有意に高発現し、その発現は、特に浸潤性の高い腫瘍先進部で亢進していることが示された。これらの知見は、免疫チェックポイント阻害剤との併用による複合癌免疫治療の開発に向けた重要な足がかりとなる。
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