研究課題
HepG2細胞にPEG-IFNα2a 100ng/mlもしくはPEG-IFNβ 1ng/mlを添加し、24時間後の細胞内のインターフェロン誘導遺伝子(ISGs)発現量をreal time PCRにて定量し、PEG-IFN非添加細胞での発現量と比較した。また、HepG2細胞から作製したHBV持続発現細胞を用いて同様の検討を行った。PEG-IFNα2aもしくはPEG-IFNβ添加後の細胞内遺伝子発現量を非添加細胞と比較した結果、PEG-IFN添加に伴い、代表的なgene1、gene2は有意に誘導され、その誘導率はPEG-IFNα2aとβでほぼ同等であることが確認された。さらに他の遺伝子においても発現を検討したところ、約61%の遺伝子でほぼ同程度の誘導が確認された一方で、34%の遺伝子ではPEG-IFNα2aに比してPEG-IFNβ添加において、より強く誘導されることが明らかとなった。次に、細胞内でのHBV発現に伴うISGs誘導の変化を検討するため、HepG2細胞由来のHBV持続発現細胞を用いて同様の検討を行った。一部のISGsでは発現誘導能の変化は認められなかった一方で、HBV非発現細胞では、PEG-IFN添加により顕著に誘導されたにもかかわらず、HBV発現に伴いその誘導が抑制されたISGsが多数存在した。以上の結果から、HBV発現に伴うISGs誘導能の減弱がHBVのIFN治療抵抗性に関与している可能性が考えられ、現在、HBV発現によりIFNによる誘導レベルが有意に変化した遺伝子に関しては、HBV関連蛋白との関連も含め、機能解析中である。
2: おおむね順調に進展している
今年度の検討では、培養細胞へのインターフェロン添加によるISGs誘導を複数回検討し、上記結果を得たが、抗ウイルス効果に関与する遺伝子の同定には至らなかったため、計画以上の進展とは言い難く、上記評価とした。
次年度は、in vivoで得られたデータの再現性を十分に確認するため、in vitroでの実験では、様々なインターフェロン濃度で検討を行い、インターフェロンαおよびβの抗ウイルス効果・遺伝子発現誘導能を詳細に検討するとともに、これらの遺伝子発現制御に関与する宿主因子の同定を行う予定である。また、同定された遺伝子の発現をshRNAやCRISPR/Cas9システムを用いて遺伝子発現を制御し、抗ウイルス効果への影響を確認していく。近年、B型肝炎ウイルス感染における治療の最終目標として細胞内のcccDNA排除が重要視されている。現在の治療薬では、cccDNAの完全排除は困難であり、本研究を通じてcccDNA減少作用を増強できるような治療法へとつなげたい。そのため、上記検討にて同定された遺伝子群の発現制御を行い、cccDNA量の変化を検討していく予定である。本検討は、まずin vitroで行い、インターフェロンによる抗ウイルス効果の増強作用を示す遺伝子が同定された場合には、さらにin vivoのHBV感染・複製モデルを利用してその効果を解析する予定である。
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