胃癌に対する免疫チェックポイント分子阻害剤の適切かつ有効な応用

2020 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 18K07974
• 研究機関: 山口大学
• 研究代表者: 西川 潤 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00379950)
• 研究分担者: 末廣 寛 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (40290978)
• 研究期間 (年度): 2018-04-01 – 2021-03-31
• キーワード: EBウイルス関連胃癌 / ピロリ菌 / ニボルマブ

研究実績の概要

EBウイルス関連胃癌細胞株には免疫チェックポイント分子PD-L1が発現しており、IFN-γ投与によりさらにその発現が増強した。このPD-L1が高発現した胃癌細胞株とPD-1が発現したT細胞株を共培養することによって、T細胞株は著明にgrowth arrestを起こした。以上の結果からEBウイルス関連胃癌において、PD-1とPD-L1の結合が抗腫瘍免疫を抑えていると報告した。本成果はすでにGastric cancer誌に論文が受理されている。抗PD-1抗体ですでに胃癌への投与が始まっているニボルマブのEBウイルス関連胃癌に対する効果を検討した。化学療法を行う切除不能再発胃癌の内視鏡的生検検体に対して、EBウイルス関連胃癌のスクリーニングを行った。ニボルマブが投与された患者の19例中2例にEBウイルス関連胃癌を認めたがともにPDであり、長期生存は得られていなかった。
その他、EBウイルス関連の粘膜下層胃癌について、リンパ節転移の有無を検討した。EBウイルス関連早期胃癌においては、リンパ節転移率が非常に低く、縮小手術や内視鏡治療が適応できる可能性が高いためである。我々のEBウイルス関連胃癌では、粘膜下層の深部浸潤を伴う28例において、脈管侵襲さえなければ、27例（96.4％）はリンパ節転移が無いことが証明できた。本結果については、他施設共同研究に参加し、すでにDigestive Endoscopy誌に論文が掲載されている。EBウイルス関連胃癌はH.pyloriと共に胃癌の発生に関連する病原因子として注目されてきたが、背景胃粘膜にH.pylori関連胃炎が合併していることがほとんどである。そこでH. pylori除菌後にもEBウイルス関連胃癌が発生するか、検討を行った。3例のH.pylori除菌後のEBウイルス関連胃癌症例を認め、世界に先駆けClinical J Gastroenterology誌に報告した。

研究成果

• [雑誌論文] Risk for lymph node metastasis in Epstein-Barr virusassociated gastric carcinoma with submucosal invasion (2021)
  • 著者名/発表者名: Yosuke Tsuji, Tetsuo Ushiku, Tomohiro Shinozaki, Hiroharu Yamashita, Yasuyuki Seto, Masashi Fukayama, Mitsuhiro Fujishiro, Ichiro Oda, Hitoshi Katai, Hirokazu Taniguchi, Kenkei Hasatani, Yasuharu Kaizaki, Atsunori Oga, Jun Nishikawa, Risaburo Akasaka, Masaki Endo, Tamotsu Sugai, Takayuki Matsumotoand Kazuhiko Koike
  • 雑誌名: Digestive Endoscopy 巻: 33 ページ: 592-597
  • DOI: 10.1111/den.13823
  • 査読あり
• [雑誌論文] EBウイルス関連胃癌の内視鏡診断と治療 (2021)
  • 著者名/発表者名: 西川 潤, 柳井 秀雄, 坂井田 功
  • 雑誌名: 日本消化器内視鏡学会雑誌 巻: 63 ページ: 255-263
  • DOI: 10.11280/gee.63.255
  • 査読あり
• [雑誌論文] Epstein-Barr virus-associated gastric carcinomas developed after successful eradication of Helicobacter pylori. (2020)
  • 著者名/発表者名: Nishikawa J, Shuto T, Yanagi A, Takagi T, Ogawa R, Sasaki S, Goto A, Hamabe K, Hashimoto S, Okamoto T, Sakaida I.
  • 雑誌名: Clin J Gastroenterol. 巻: 13 ページ: 506-511
  • DOI: 10.1007/s12328-020-01094-8.
  • 査読あり
• [備考]
  • URL: http://ds0n.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~kensa2/nishikawa/