本研究は、癌進展に伴うエピゲノム変化を指標に大腸癌の進展・転移に関わるlncRNAを同定し、診断・治療法開発につなげることを目指している。公共データベースであるTCGAのデータセットを用い、腫瘍部で正常より発現亢進が認められ、高発現と予後不良が相関するlncRNAを8遺伝子抽出した。 スクリーニングの結果抽出したlncRNAの中からlncXに着目し機能解析を行った。lncXのノックダウンにより細胞増殖が抑制され、ノックダウン72時間後には複数の細胞株でのアポトーシス誘導作用が認められた。ノックダウンによる遺伝子変化を網羅的に解析するために遺伝子発現マイクロアレイを行い、変動遺伝子群のGO解析、Pathway解析を行ったところlncXのノックダウンは細胞周期群の遺伝子を変動させることが明らかとなった。 lncXノックダウン後のqRT-PCRではCyclinB1、AURKA、survivinなどの細胞周期関連遺伝子群の低下が認められた。細胞周期に関連する遺伝子群はその発現時期が周期毎に厳密に制御されており、AURKAはプロモーター上のCDE、CHRドメインと遺伝子発現を抑制する転写因子複合体であるDREAM complexによる制御を受けることが知られている。そこでAURKAのプロモーター領域をpGL3 basicに組み込みCDEドメインのWT、Mutを作成しlncXをの影響を調べる目的にルシフェラーゼレポーターアッセイを行った。CED WTにおいてはlncXのノックダウンによりレポーター活性の低下が認められた。一方CDE MutにおいてはDREAM complexによる抑制が機能せず、CDE WTに比べレポーター活性の上昇が認められたが、lncXのノックダウンレポーター活性の低下を認めた。よってlncXは細胞周期遺伝子群の転写活性化に関連すると考えられた。
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