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2018 年度 実施状況報告書

NASH発症過程におけるリン脂質の産生および転移による脂肪滴形成促進の分子機構

研究課題

研究課題/領域番号 18K07982
研究機関東邦大学

研究代表者

伊藤 雅方  東邦大学, 医学部, 講師 (20459811)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード肝炎 / 肝臓 / 脂肪肝 / 脂肪滴 / ホスファチジルコリン / リン脂質 / NAFLD / NASH
研究実績の概要

現在、肥満人口の増加にともない非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease; NAFLD)及びNAFLDが進行した非アルコール性脂肪性肝炎 (Non-alcoholic steatohepatitis; NASH) が増加傾向にある。肝炎は肝硬変・肝癌へと進行する。そのため、NAFLD/NASH予防法や診断法の確立が急務である。NAFLDは肝細胞に過度な中性脂肪(TG)が蓄積した状態である。脂肪滴表面の脂質一重膜はホスファチジルコリン(PC) がその大部分を占める。そこで、肝細胞における脂肪滴形成機構の解明を目指して、PCを脂質膜間で転移させる活性を有するSTARD10 (Steroidogenic acute regulatory protein-related lipid transfer domain containing 10)とLands’ 経路でPC産生を担うリゾPCアシル基転移酵素であるLPCAT1 (lysophosphatidylcholine acyltransferase 1)に着目して研究を遂行した。マウス肝癌由来細胞株Hepa1-6にSTARD10及びLPCAT1を過剰発現させると脂肪滴の蓄積量が増加したが、LPCAT1単独の発現では比較的小さい脂肪滴の割合が増加し、両者の共発現では大きい脂肪滴の割合が増加した。そのためSTARD10とLPCAT1とが協調して脂肪滴のsurface-to-volume ratioを調節し、脂肪滴形成を促進すると考えられた。さらに、 Stard10及びLpcat1の遺伝子欠損マウスは高脂肪食負荷による肝臓への脂肪蓄積が起こりにくく、脂肪滴の球形度が小さくなる傾向があることが示された。そのため、LPCAT1とSTARD10が協調して脂肪滴形成を促進することが考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「肝細胞においてホスファチジルコリン(PC)産生酵素であるLPCAT1とPC転移タンパク質であるSTARD10とが協調して脂肪滴サイズを制御する」という仮説を検証することを目的に研究を遂行しているが、培養細胞系の実験でSTARD10とLPCAT1の協調作用で大きな脂肪滴が形成されること、遺伝子欠損マウスの系で肝臓での脂肪蓄積にSTARD10とLPCAT1が必要であることが実験結果から裏付けられている。脂肪滴形成の分子機構がリン脂質の産生と転移という新たな観点から解明されつつあるため、おおむね順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

本研究の結果、Stard10遺伝子欠損マウス(Stard10-/-マウス)及びLpcat1遺伝子欠損マウス(Lpcat1-/-マウス)が高脂肪食負荷による肝臓への脂肪蓄積が起こりにくく、脂肪滴の球形度が小さくなる傾向があることが示された。これは脂肪滴内の中性脂肪と脂肪滴表面を覆うリン脂質の割合(surface-to-volume ratio)が変化し、リン脂質の比率が大きくなっていることを示している。今後は高脂肪食負荷を行ったStard10-/-マウス及びLpcat1-/-マウスの肝臓の脂肪滴の形状を脂肪滴染色蛍光試薬および共焦点レーザー顕微鏡を用いて3次元画像を取得することで詳細に解析し、野生型マウスとの比較を行う。また、Stard10-/-マウスとLpcat1-/-マウスの交配によって得られたダブルノックアウトマウスも同様の解析を行う。そのことでリン脂質の産生と転移が脂肪滴のsurface-to-volume ratioやその形状に与える影響を明らかにする。さらに血中のリポタンパクの解析や肝臓の脂質代謝関連遺伝子の発現解析を行うことでリン脂質転移タンパク質とリン脂質産生酵素の脂肪滴形成への影響が全身の脂質代謝にどのように波及するかを明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

(理由)
ほぼ計画通りに使用し、未使用額は少額であった。
(使用計画)
未使用額は少額であったため、当初の次年度の計画に合わせて使用する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2019 2018

すべて 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)

  • [学会発表] STARD10 promotes lipid droplet formation cooperatively with LPCAT12019

    • 著者名/発表者名
      Ito M, Tomida T, Mikami Y, Ohshima D, Adachi-Akahane S
    • 学会等名
      9th Federation of the Asian and Oceanian Physiological Societies Congress (FAOPS2019)
    • 国際学会
  • [学会発表] 脂質転移タンパク質とリゾリン脂質アシル基転移酵素による脂肪滴形成促進機構2019

    • 著者名/発表者名
      伊藤 雅方, 冨田 太一郎, 三上 義礼, 大島 大輔, 赤羽 悟美
    • 学会等名
      第92回日本薬理学会年会
  • [学会発表] 肝細胞脂肪滴形成における脂質転移タンパク質STARD10 (Steroidogenic acute regulatory protein-related lipid transfer domain containing 10) の役割について2018

    • 著者名/発表者名
      伊藤 雅方, 冨田 太一郎, 三上 義礼, 大島 大輔, 赤羽 悟美
    • 学会等名
      第248回生理学東京談話会
  • [学会発表] 非アルコール性脂肪性肝炎モデルマウスを利用した脂肪滴形成におけるリン脂質転移タンパク質とリン脂質産生酵素の役割2018

    • 著者名/発表者名
      伊藤 雅方, 冨田 太一郎, 三上 義礼, 大島 大輔, 高橋 佳一, 進藤 英雄, 清水 孝雄, 赤羽 悟美
    • 学会等名
      第41回 日本分子生物学会
  • [学会発表] 肝細胞における脂質転移タンパク質とPC産生酵素による脂肪滴形成促進機構2018

    • 著者名/発表者名
      伊藤 雅方, 冨田 太一郎, 三上 義礼, 大島 大輔, 赤羽 悟美
    • 学会等名
      生理学研究所 研究会 2018「心臓・血管系の頑健性と精緻な制御を支える分子基盤の統合的解明」
  • [学会発表] Crucial role of STARD10 in regulating lipid storage in mouse model of nonalcoholic steatohepatitis (NASH)2018

    • 著者名/発表者名
      Ito M, Tomida T, Mikami Y, Murakami S, Adachi-Akahane S
    • 学会等名
      18th World Congress of Basic and Clinical Pharmacology
    • 国際学会

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公開日: 2019-12-27  

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