研究課題
炎症性腸疾患(IBD:Inflammatory Bowel Diseaes)と過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndrome)は、腸管の器質的障害を伴うか否かの違いにより全く異なる疾患と考えられている。臨床的寛解期もしくは粘膜潰瘍が治癒している状態のIBD患者において、下痢や腹痛のようなIBS様症状を呈することが報告されており、このようなIBDの非活動期にIBS様症状を訴える患者は30-50%程度と報告されている。日本人を対象とした我々の先行調査でも25%程度であった。この原因として腸管粘膜における微小炎症の持続、腸内細菌叢の異常、腸管透過性の亢進がIBDの非活動期において呈するIBS様症状に関連している可能性が示唆される。 そこでIBDの非活動期にIBS様症状を呈する患者における腸内細菌叢および腸管透過性の変化を明らかにすることを目的に、それらの変化とIBS様症状の関連性を検討した。IBD(+)IBS(+)群(Inactive IBD-IBS様症状群)12名、IBD(+)IBS(-)群(Inactive IBDにおいてIBS様症状を呈さない群)15名での微小炎症マーカー、腸内細菌、粘膜透過性の関連についてのデータを解析した。その結果、我々はIBS 様症状を呈する寛解期クローン病患者では、IBS症状を呈さない寛解期クローン病患者より、有意に便中カルプロテクチンが高いことを見出した。この事実は、IBS 様症状が内視鏡でも判別できない分子レベルの微小炎症に起因している可能性を示唆するものであり、この腸管の微小炎症の有無を判別するマーカーが、IBS 症状を有する寛解期の IBD 患者の治療評価のバイオマーカーになりうる可能性を示した。この研究業績に関しては現在論文投稿中である。
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