研究課題
炎症性腸疾患(IBD)における慢性炎症からの腸上皮の異形成化と癌化にはキチナーゼ様タンパクI型(CHI3L1)が深くかかわっている。我々は、汎キチナーゼ阻害剤でキサンチン誘導体の一つであるカフェインがCHI3L1の発現・活性化を抑制することを発見している。しかし、カフェインは心血管系に対する副作用が強く、またマウスではヒトと異なってTRPA1を活性化することで辛味(痛み)としてとらえられることがわかった。マウスに経口摂取(自由飲水)させるためにはカフェイン濃度を0.2mMまで下げ、なおかつ10%ショ糖液に溶かす必要性が出てきた。現在、1)ショ糖のみ、 2)カフェイン +ショ糖、3)カフェイン +PTXN +ショ糖、4)PTXNのみ5)水のみの計5群に分けてデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)3クール繰り返し投与の大腸発癌モデルにて経過を観察中であるが、2)と3)に高い頻度で発癌性を認めている。本研究は、キサンチン誘導体であるカフェインとPTXNを単剤・併用投与することによるIBD関連性癌化の抑制作用を検証することを目的としているが、研究中にヒト上皮異形成時にCHI3L1が上皮細胞の核内へ移行し、キサンチン誘導体で核内移行が阻害されることを発見した。この核内移行を的確に検証するために、我々は直視直達が可能な早期癌として久留米大学歯科口腔医療センターの協力のもと、口腔癌の前癌病変である白板症(n=29)のパラフィン切片を用いてCHI3L1の免疫染色を行った。この結果、発癌早期の異形成や上皮内癌においては、CHI3L1発現が核内に強く特異的な染色像として認められたが、反対に、進行癌においては細胞質に限局し核内での発現は認められなかった。上皮異形成のある症例13例中11例でCHI3L1核内の発現を認め(感度 : 73.3%、特異度 : 85.7%)、この発見・発明について現在、特許申請に向け学内に「発明届出」を提出中である。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
Diagnostics (Basel)
巻: 11 ページ: 207
10.3390/diagnostics11020207
bioRxiv Preprint
巻: - ページ: -
10.1101/2021.01.05.425478