研究課題
肝由来の培養細胞であるOUMS29とHuh7を用いて遊離脂肪酸の影響ならびに小胞体ストレス誘導剤の影響を検討した。遊離脂肪酸負荷では飽和脂肪酸であるパルミチン酸にて酸化ストレスと小胞体ストレスが引き起こされた。それに伴いオートファジーに異常が生じた。この時オートファゴゾームの形成、ライソゾームの酸性化とライソゾーム酵素であるカテプシン活性には異常はなかった。しかし、オートファゴゾームとライソゾームの癒合の段階に障害が存在した。これに少量のプロテアソーム阻害剤を投与するとユビキチンとp62を含むMallory-Denk体に類似した細胞内封入体が形成され、さらに濃度を上昇させるとアポトーシスを生じた。この異常には特に小胞体内のカルシウム濃度の低下が起こった。この障害はオレイン酸やエイコサペンタエン酸にて回避された。これには筋小胞体カルシウムATPaseが重要な働きをしていた。また亜鉛がパルミチン酸による小胞体ストレス、オートファジーの障害、封入体形成ならびに細胞障害を改善した。銅負荷においても小胞体ストレスが起こり、オートファジーの障害を生じた。また、銅もMallory-Denk体類似の細胞内封入体を形成した。また銅は細胞にアポトーシスを誘導した。これらのオートファジーの異常、封入体形成ならびに細胞死は亜鉛の投与により改善した。HCV感染によりオートファジーの障害、酸化ストレス、小胞体ストレスならびにDNA損傷が起こしたが、細胞死は起こらず、細胞増殖にも障害はなかった。このことが発癌に関係している可能性があると考えられた。またHCVを薬剤で排除後もDNA損傷は残存し、これがウイルス排除後の発癌に関連している可能性があった。不飽和脂肪酸と亜鉛は脂肪性肝疾患を含む小胞体ストレスの関与する肝疾患においてオートファジー の改善を含む機序により細胞死を防ぐ可能性が示唆された。
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Med Mol Morphol
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