研究実績の概要 |
慢性炎症に関連するがんでは、DNA高メチル化によるがん抑制遺伝子の不活化が、発がん原因となる。DNAメチル化異常を標的とした脱メチル化剤治療は、これらの固形がんに対して有効であることが報告されている。しかしながら、脱メチル化剤はMTDではなく最大生物学的効果用量で用いることで高い治療効果が得られるため、その臨床導入には、がん組織における脱メチル化の高感度なリキッドバイオプシーの確立が不可欠である。 そこで本研究では、『がん細胞内でメチル化されているゲノム領域(即ち、ヌクレオソームを形成している領域)は、血中遊離DNAとして安定に存在する』ことに着目して、脱メチル化をモニターする新規リキッドバイオプシーを開発する。 3年目の本年度は、がん細胞由来の血中遊離DNAが10%程度存在することが確認できた症例について、血中遊離DNAがゲノム上のどの領域に由来するかを次世代シークエンサーを用いて解析した。その結果、解析対象とした異常DNAメチル化の標的となり得るCpG部位857,212ヶ所のうち172,253ヶ所(20.1%)が深度100以上で血中遊離DNAとして検出された。また、同一患者由来のがん組織、及び、非がん組織のDNAメチル化状態を解析した。その結果、15,487ヶ所のCpG部位が、がん組織特異的に異常メチル化されていることが分かった。現在、この血中遊離DNAとして放出されたゲノム領域が、がん組織特異的に高度にメチル化されているゲノム領域とどれくらい一致しているかを調べるために、データの統合解析を進めている。
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