研究実績の概要 |
本邦においてヘリコバクターピロリ感染の低下と共に胃食道逆流症(GERD)が増加している。GERDは食道腺癌の高リスク因子であり、実際に食道腺癌は増加傾向にある。食道腺癌は、GERDによって傷害された食道扁平上皮が円柱上皮化に置換した病態のバレット食道を経て発生する。これまでバレット食道・食道腺癌の発生にGERDによる酸化ストレスが深く関与する報告がなされてきた。さらに疫学調査によって肥満の増加とバレット食道・食道腺癌の増加に関与していると報告されたが、これら二つがどの様に相乗効果をもたらすのか詳細な機序は不明である。本研究は肥満が酸化ストレス制御の重要な因子であるNrf2-keap1に与える影響を検討しバレット食道発生メカニ ズムを解明し食道腺癌抑制機序を明らかとすることである。
1. 動物モデルを用いた検討: 8週齢・雄ラットを用いて慢性逆流性食道炎モデ ルを作成し通常食投与(Ctl群)し、4週後の食道検体を採取し継時的にバレット食道発生を評価した。加えて高肥満食投与した群(Obs群)を 設定しCtl群と食道円柱上皮化率を比較した。Ctl群30%(3/15)、Obs群40%(4/17)と有意差を認めなかった。 2. 培養細胞を用いた検討: ヒト不死化食道扁平上皮細胞 (NES-B3T, NES-B10T)を用いてpH5.5, 0.4 mM酸性胆汁酸を投与しadipokineである20 ng/mL leptinの有無で円柱上皮化の重要因子であるBmp-4とNrf2発現の指標であるNqo1 mRNAをRT-PCRで測定した。BMP4発現は有意差を認なかったが、Nqo1発現はleptin投与にて上昇した(1.2±0.5 vs. 3.3±0.4, p< 0.05, t-test)。
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