本邦においてヘリコバクターピロリ感染の低下と慢性萎縮性胃炎の減少に伴い、胃食道逆流症(GERD)が増加している。GERDは下部食道粘膜を傷害しびらんや潰瘍を形成するが、その治癒過程において正常食道を構成する扁平上皮による治癒とは異なり円柱上皮による異常治癒を呈する場合がある。こればバレット食道であり、食道腺癌の発生母地となる。よって食道腺癌を抑制するにはバレット食道発生を抑制することが重要であるが、その発生機序は未だ明らかとなっておらず、バレット食道を完全に抑制することは現時点では困難である。これまでの研究でバレット食道発生において肥満と酸化ストレスの関与が報告されてきた。我々はこれまで、食道胃接合部内腔で酸化ストレスを引き起こす一酸化窒素(NO)が高濃度で発生し食道炎の増悪因子である事、さらに肥満細胞から分泌されるadipokineの一つであるleptinも酸化ストレスを介した食道炎の増悪因子であることを明らかとした。本研究は肥満が抗酸化ストレスにおける重要な因子であるNrf2-keap1に与える影響を検討しバレット食道発生メカニズムを解明することである。 ヒト不死化食道線維芽細胞(BEF-hT)を使用し10 ng/mL leptinを1週間投与した。しかし細胞数はコントロール群(vehicle)と比較し著変なく、Nrf2-keap1シグナル経路により発生する抗酸化酵素のNqo1 mRNAの増加を認めなかった。
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