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2018 年度 実施状況報告書

B型肝癌制御におけるNKG2Dリガンドの役割とHBVによる回避機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K07996
研究機関千葉大学

研究代表者

室山 良介  千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (50549459)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードB型肝炎ウイルス / 肝細胞癌 / NKG2Dリガンド / 自然免疫システム
研究実績の概要

本年度は、B型肝癌に対する自然免疫システムの役割を解明すべく、B型肝癌組織における遺伝子発現変動について網羅的解析を行った。
公共のデータベースより、21症例のB型肝癌患者の癌部・非癌部のRNA-seqデータを入手し、両者における遺伝子発現を比較したところ、9375/19571遺伝子において発現変化が認められた。NKG2Dリガンド・ファミリーに属する遺伝子に関しては、肝組織ではMICA, MICB以外のNKG2Dリガンドはほとんど発現しておらず、かつ癌部において、MICA、MICBの発現上昇が認められた。また、細胞膜上に発現したNKG2Dリガンドを切断するシェダーゼの発現に関しては、癌部においてADAM9/10, MMP9の発現上昇が認められた。今後、C型肝癌などの非B型肝癌に対して同様の解析を行い、両者を比較することで、B型肝癌固有の発現変化か否かにつき検討を行う予定である。
次に、Gene ontologyを用いたenrichment解析を行ったところ、NKGD2リガンドが属する「innate immune response」に関連する遺伝子群は癌部において有意に変動していた。これらの遺伝子は、癌化において重要な役割を果たしている可能性があるため、さらなる解析を行っていく予定である。
次に、NKG2Dリガンド・ファミリーの塩基配列を調べたところ、MICA, MICB, ULBP1-5においてアミノ酸変異を認めるバリアントが同定された。さらにMICAにおいては、挿入/欠失により、C端欠如のMICAを発現している症例が存在することが判明した。これらの変異は、本来のリガンドの機能を変化させる可能性があると考えられるため、さらなる解析を行っていく予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、B型肝癌に対する自然免疫システムの役割を解明すべく、B型肝癌組織における遺伝子発現変動について網羅的解析を行った。
公共のデータベースより、21症例のB型肝癌患者の癌部・非癌部のRNA-seqデータを入手し、両者における遺伝子発現を比較したところ、9375/19571遺伝子において発現変化が認められた。NKG2Dリガンド・ファミリーに属する遺伝子(MICA, MICB, ULBP1-6)に関しては、肝組織ではMICA, MICB以外のNKG2Dリガンドはほとんど発現しておらず、癌部において、MICAでは約1.3倍、MICBでは約3倍程度の発現上昇が認められた。また、細胞膜上に発現したNKG2Dリガンドを切断するシェダーゼの発現に関しては、癌部においてADAM9/10, MMP9の発現上昇が認められた。
次に、Gene ontologyを用いたenrichment解析を行ったところ、NKGD2リガンドが属する「innate immune response」に関連する遺伝子群は癌部において有意に低下しており、B型肝癌では自然免疫システムが減弱化していることが示唆された。
次に、NKG2Dリガンド・ファミリーの塩基配列を調べたところ、MICA, MICB, ULBP1-5においてアミノ酸変異を認めるバリアントが同定された。さらにMICAにおいては、挿入/欠失により、C端欠如のMICAを発現している症例が存在することが判明した。

今後の研究の推進方策

本年度の研究により、NKG2Dリガンド・ファミリーのうち、B型感染患者の肝組織ではMICA, MICBの2つ以外はほとんど発現が認められず、かつ癌部ではMICA, MICBの発現が上昇していることがわかった。また、細胞膜上に発現したNKG2Dリガンドを切断するシェダーゼの発現も癌部において上昇していることが判明した。今後はC型肝癌などの非B型肝癌に対して同様の解析を行い、両者を比較することで、B型肝癌固有の発現変化か否かにつき検討を行う予定である。また、培養細胞株にHBV蛋白を発現させた際のNKG2Dリガンド・ファミリーやシェダーゼの発現変化についても検討を行っていく予定である。
また、NKG2Dリガンド・ファミリーが属する「innate immune response」に関連する遺伝子群のうち、癌部において発現変動を認める遺伝子がいくつか同定された。これらの遺伝子は、癌化において重要な役割を果たしている可能性があるため、さらなる解析を行っていく予定である。
また、NKG2Dリガンド・ファミリーの塩基配列を調べたところ、アミノ酸変異や構造変異を伴うバリアントがいくつか同定された。これらの変異は、本来のリガンドの機能を変化させる可能性があると考えられるため、さらなる解析を行っていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

本研究を推進するにあたり、本年度はB型肝癌における遺伝子発現変化につき、RNA-seqデータを用いて網羅的解析を行った。その際に使用するRNA-seqデータは公共のデータベースより取得しており、物品費等の支出なしで研究を推進することが可能であったため、次年度使用額が生じることとなった。
本年度の研究成果により、次年度以降に行う研究の推進方策に関して重要な知見を得ることができており、次年度以降は得られた知見に基づいて、引き続きB型肝癌制御におけるNKG2Dリガンドの役割とHBVによる回避機構の解明を行っていく予定である。そのためには、PCR、クローニング、トランスフェクションなどの消耗品を購入する必要があり、次年度の予算は、これら消耗品等の購入に使用する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] NGSデータを用いたゲノム異常解析に基づく肝癌関連遺伝子の探索2018

    • 著者名/発表者名
      室山良介, 神崎洋彰, 加藤直也
    • 学会等名
      第42回日本肝臓学会東部会
  • [学会発表] 2.The exploration of cancer-related gene alterations using whole-genome sequencing data in HBV-related hepatoma cell line2018

    • 著者名/発表者名
      Ryosuke Muroyama, Hiroaki Kanzaki, Tetsuhiro Chiba, Ryo Nakagawa, Masato Nakamura, Shingo Nakamoto, Shin Yasui, Hiroshi Shirasawa, Naoya Kato
    • 学会等名
      International HBV Meeting
    • 国際学会

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公開日: 2019-12-27  

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