研究実績の概要 |
公共のデータベースからB型肝癌患者の癌部・非癌部のRNA-seqデータを入手し、遺伝子発現変動について網羅的解析を行ったところ、癌部にてMICA, MICBの発現上昇が認められ、細胞膜上に発現したNKG2Dリガンドを切断するシェダーゼであるADAM9/10, MMP9の発現上昇も認められた。次に、癌部にて発現変動を認めた遺伝子を用いてco-expression networkを構築したところ、癌化との関連が示唆される16個のmoduleが同定され、up-regulateされたmoduleにはcell cycleに属する遺伝子が、down-regulateされたmoduleにはimmune response, inflammatory response, catabolic processに属する遺伝子が関連することが判明した。また、TCGAデータベースに登録されている肝組織のデータを用いて、肝癌細胞におけるDNAメチル化異常と遺伝子発現レベルとの関連性を検討したところ、肝癌組織ではプロモーター領域の脱メチル化が多く認められ、特にcell cycle, telomere, immune responseに関連する遺伝子に対するDNAメチル化異常が肝発癌に関与していることが示唆された。 MICAにはN端が欠如したVariantが存在していることが知られているため、完全長、N端欠如のMICAを発現するベクターを構築して肝がん細胞株に導入し、ウェスタブロットを施行したところ、両者間でバンドのパターンが異なっており、翻訳後修飾に差異が生じている可能性が示唆された。また、N端欠如のMICAはELISAにて培養上清中にほとんど検出されず、完全長のMICAとは細胞中の動態が異なっていることが示唆された。
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